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会津駒ヶ岳 ・ 中門岳

2002年(平成14年) 6月29日(土)


コース・タイム
 宇都宮(3:35) ⇒ 鬼怒川温泉 ⇒ 山王峠 ⇒ 檜枝岐 ⇒ 登山口駐車場(5:55)
  登山口(6:15) → 水場(7:45-8:00) → 駒ノ小屋(9:30) → 会津駒ヶ岳(9:55) → 中門大池(10:25-昼食-11:00) → 中門岳 → 駒ノ小屋(12:10) → 水場(13:20) → 登山口(14:20)
 登山口駐車場(14:25) ⇒ アルザ尾瀬の里(14:30-15:35) ⇒ 自宅(18:40)
 歩行距離 登山口 (5.3km) 駒ヶ岳 (2.2km )中門岳 往復合計 15.0km

同行者
 妻

 実は,先週末に 会津駒ヶ岳 登山を計画していたのだが,天候が安定せずに断念した。今日の天気予報も,あまり良 くはなく,曇りの予報だったが,北ほど天気がよいと言うことに希望をもって出かけることにした。 インターネットによる直前のスポット天気予報によると, 檜枝岐 地方は朝夕は曇りでも日中は晴れると言う。
 今日のコースは長くなることと,できれば林道終点にある駐車場まで行きたいことな どから,できるだけ早い時間に自宅を発ちたかった。4時に出発する予定だったが,実際には 3時35分 にスタートできた。自宅から 檜枝岐 までは約140km。2時間半から3時間かかると見て,遅くとも7時には歩き出せる だろうと思っていた。
 宇都宮から檜枝岐までのコースは, 東北道 を西那須野塩原ICまで行き,塩原を通 って上三依で 国道121号 に出るのが良いと言われている。しかし, 鬼怒川温泉 経由で行くコース でも,道を選べば大差はない。高速料金がかからないのも魅力で,い つもこのコースを取っている。宇都宮市内から,新里街道を通り県道22号で大沢に抜け,国道11 9号を少し走ったところで県道279号に入る。県道279号は今市市大桑で国道121号に出る。 この道は別名 「コンパニオン街道」 と言われている。名前の由来は,バブル絶頂期, 鬼怒川温泉 での宴会が盛んだった頃,にわか仕立てのコンパニオンが,宇都宮市近在から大量に働き に出ていた。このとき,コンパニオンを乗せたマイクロバスが頻繁に行き来したことから付けられた という。地元の人だけが知る抜け 道だった。
 檜枝岐の集落に入る少し手前に右に入る林道があり 「会津駒ヶ岳登山口」 という大きな看板が立っている。
 看板の少し手前の右側に, 駒ヶ岳登山者用の駐車場 があるのだが,上まで登ってみることにした。もし,車を停められなかったときは,戻 って,下の駐車場に停めればいい。看板のあるところの林道を登っていくと,その終点から登山道 に取り付くことができる。下の駐車場に停めて下から歩くより30分以上時間が節約できる。林道 の終点近くには,合計して 30台程度の駐車スペース があった。しかし,シーズン中の週末には早い時間に満杯になってしまうという。私た ちがそこに到着したのは 6時5分前 だったが,残る駐車スペースは僅かだった。林道の終点から100mほど下の駐車スペ ースに車を停めることができた。最近,マイカー登山が盛んになるに従って,狭い路肩や,カーブ など通行のじゃまになるところに停めてしまうケースが増えている。迷惑行為を気にしない,自己 中心的な登山者が増えているのだろうか。そうは思いたくない。
 登山道への取り付きは, 木製の階段 で,階段を上った後も,いきなりの急登である。先が長いので焦らずゆっくりと歩き出 した。足元は,段差も大きくなく,比較的歩きやすい。少しずつだが確実に高度を稼いでいく。 20分ほど登ったところで,小休止とし,おむすびを1個食べ,朝食とした。

 大きな ブナ の樹が並ぶ登山道は,明るい陽が射し込み,さわやかで気持ちがいい。大きなブナの樹 肌に 名前と日付が刻まれた落書き が目立ったが,これは単なる落書きではないということを後で知った。昔, マタギ をしとめたとき, 熊の霊を慰めるために ,しとめた人の名前と日付を幹に彫りつけ,祈ったという。明らかに落書きと思われる ものもあったが。中には,そのようなものも含まれていたのだろう。次回に探してみたい。
 足元には色々な花が咲いていた。 ギンリョウソウ もいたるところに咲いていた。出会った人が 「佃煮にでもしたいほど」 と言っていたほどたくさん見られた。それほど水分が多いと言うことなのだろう。

 「ノウゴウイチゴ」 は,花びらが7〜9枚あり, ヘビイチゴ などとは区別できる。日当たりの良い道ばたに見られた。

 「マイヅルソウ」 も白い小さな花を咲かせていた。

 「ミヤマカタバミ」 も,白い花のものと,白地に紫の筋が入りピンクに見えるものがあった。

 エンレイソウ は花びらが無く,赤紫の萼片がある。


 この登山道には, 距離を示す標柱 が整備されていた。ただし,これは登山口からの距離で はなく, 国道 からの距離が表示されている。


 少し離れた藪の中に,珍しい花を見つけた。叢生する4枚の幅広の葉の中央から伸び た花柄に白い花が数個付いている。帰宅して図鑑で確認したところ, 「ツバメオモト」 だった。

 90分で 水場入り口 まで登った。水は十分に持ってきたが,水場まで行ってみることにした。水場は,急な 斜面を3分ほど降ったところにあり,冷たい水が豊富に湧き出していた。
 水も美味しかったが,それ以上に感激したのが, シラネアオイ に会えたことである。 シラネアオイは,本家である 日光白根山 でほぼ絶滅状態で,私はここ数年の間,日光白根山で出会ったことがない。かつては 座禅山 の斜面を埋め尽くすほどに咲いていた シラネアオイ を知っているだけに残念でならない。この水場の シラネアオイ は,わずか数本だったが,薄青色の柔らかな花びらを広げ,ひっそりと咲いていた。

 水場は, 駒ヶ岳 までのほぼ中間点だ。まだこれから先も,きつい登りが待っている。
 アズマシャクナゲ が咲いていた。


 先ほどから気になっていたのだが, 小さな虫 が顔の前を飛び回っている。その数がだんだんと増え,目や耳にさえ飛び込んでくる。 口を開いていると口の中にまで飛び込んでくる。小さな虫たちだって生きており,生きるための活 動なんだろうと理屈では分かっていても,何とも虫たちが憎たらしく,どうにもできないことが, なおさらイライラさせてくれる。帰宅して,写した写真をみて驚いた。なんと,その虫たちの大群 がはっきりと写っているではないか。途中から駒ヶ岳の山頂方面を写した写真に, 砂粒のような黒い点の集まりが写っている  また,レンズの直ぐ前を飛び交う虫たちは,ゴミのようなボケた点として写っていた。
 このように虫に悩まされた経験はあまり無い。このように虫が多い理由を私なりに考 えてみた。第一に,環境と時期の問題。気温が上昇し,雪が融けて,いたるところに水たまりがで き湿気が多い状態は,虫たちの発生には最適な環境なのだろう。第二には,風が殆ど無い状態だと いうこと。この小さな虫たちは,少しの風でも逆らって飛ぶことはできないだろう。今日は運が良 いのか悪いのか殆ど無風状態である。
 池の平 の少し手前, 駒の小屋 が見渡せるところに 見晴台 がある。

 目を, 駒の小屋 から右に移していくと 駒ヶ岳 山頂方向 が見渡せる。なだらかな頂の左の方が山頂だ。雪が所々に残っている。さすがに豪雪地 帯だ。右の稜線は, 大戸沢岳 に続いている。 中門岳 は山頂の後方になる。


 休憩所の足元に ハクサンコザクラ が集まって咲いていた。まだこのときは,頂上付近にはもっと大きな群落が見られるだ ろうと思っていた。


 しかし,すこし様子がおかしいことに徐々に気が付き始めていた。 池ノ平 に着くまでにも,いくつかの湿原を通過する。しかし,この湿原に緑のものが全くない のである。枯れ草が,雪解け水が流れた方向に押し倒されたままで, 雪が融けて間がないこと を示していた。

 斜面にも多量の雪渓が残っている。雪渓の上に残された足跡を辿って,滑らないよう に注意しながら 駒の小屋 を目指して登った。

 駒の小屋 の前にある, 池ノ平 の標識のところで,積雪はまだ1メートルはあった。他の登山者の話などから, 山頂付近でも ハクサンコザクラ はまだ咲いていないと言うことが確認された。でも,せっかく来たのだから, 駒ヶ岳山頂 までは行ってみようと言うことになり,雪の上を,山頂目指して 歩き出した。

 雪は弛んでシャーベット状になっており,足が取られて歩きにくい。滑落の危険を感 じるほどの傾斜ではないので,その点は安心だったが,特に登りが疲れた。
 振り返って 駒の小屋 を見た。

 会津駒ヶ岳山頂 には立派な標柱があったが,灌木に囲まれ,見晴らしはあまり良くない。さっそく記念 写真を撮った。


 この辺りで昼食にするつもりだったが,適当な場所がないので,もう少し先まで行っ てみることにした。
 駒ヶ岳山頂 から 中門岳 までは,開けた緩やかな尾根歩きで気持ちがいい。雪の上にでもシートを広げて昼食に しようかとも思ったが,適当な場所がない。あれこれしているうちに 中門大池 まで来てしまった。 ここには休憩所があり,ベンチもあったのでここで昼食にするこ とにした。

 ここに面白い標柱が立っている。その標柱には 「中門岳(この一帯を云う)檜枝岐村」 と書かれている。
 普通は「○○山」という標識は山頂に立てるものだと思うのだが,なぜかここに立っ ている。中門大池の先にもう少し高い場所があり,一般にはそこが山頂とされている。「(この一 帯を云う)」と但し書きを付けているところを見ると,この標識を立てた檜枝岐村でも,ここに標 柱を立てるのにはやや抵抗感があったのだろうか。


 予定より随分早く着いたので,十分に時間をとり,ゆっくり昼食にした。この山頂湿 原の様子は,尾瀬の アヤメ平 によく似ている。ただし,ここから見る 燧ヶ岳 は,アヤメ平から見るそれとは違い,ネガフィルムを裏焼きしたように,山の形が左右 で入れ替わっている。今日は見通しはあまり良くない。近くの山の稜線は見えるのだが,初めて見 る形なので,それがどの山なのかは分からない。
 中門大池 で昼食を終えてから,中門岳の山頂と思われる所まで行ってみた。見晴らしは良いとこ ろだが,山頂としての標識はない。木道に沿って小さな池を一周してもと来た道を戻った。


 中門岳から 燧ヶ岳 を望んだ。


 ショウジョウバカマ


 イワイチョウ  紫色の蕾は,ハクサンコザクラ


 再び, 中門大池 に戻り,下山のために駒ヶ岳を目指した。


 今日は ハクサンコザクラ に会いたくて 会津駒ヶ岳 に登ったのだが,まだ時期が早かったようだ。ここの ハクサンコザクラ が満開になるには,あと2週間ぐらいかかるだろう。
 ハクサンコザクラ は,雪解け後にいち早く花を付ける植物で,芽を出してから花を付けるまでの期間は短 い。年によって早い遅いがあるために,花を見られないことも少なくはない。花が見られなくて残 念だったが,会津駒ヶ岳はとても魅力的な山なので,ぜひ,また来てみたい。

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