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奥 白 根 山 2002年(平成14年) 7月13日(土) |
コース・タイム 宇都宮(5:00) ⇒ 金精峠 ⇒ 菅沼駐車場(6:10) 登山口(6:30) → 弥陀ガ池(8:35-45) → 奥白根山頂(10:05) → 避難小屋(11:15) → 前白根山(12:05-昼食-40) → 五色山(13:10) → 五色沼(13:40-50) → 弥陀が池(14:30) → 登山口(15:50) 菅沼駐車場 ⇒ 金精峠 ⇒ 日光湯元(入浴) ⇒ 自宅 同行者 キクさん,Mさん,Kさん,妻 |
先週の
大真名子山−小真名子山
の清掃登山のとき,来週はどこに行こうかと言う話になった。
奥白根山
の
シャクナゲ
が丁度良い頃だから,奥白根山に行きたいということに話がまとまった。結局,同行者
は,キクさんの他に,キクさんが声をかけ,ハイキングクラブに入っている,
Mさん,Kさんの2人
を誘い,
妻と私を含めて5人
のパーティーとなった。 日光連山 は霞んでいるが,雨の降るような雲ではない。天気は少しずつ良くなってきた。 菅沼 の 白根山登山口 には,既に 30台 ほどの車が停まっており,身支度を整えて,これから出発しようとしている人も多かっ た。 ![]() いくつかのグル−プと前後しながら登った。私たちはゆっくりと歩くので,後から追 いついたグル−プがいくつか追い越していった。しかし,そういうグル−プのいくつかは,結局休 憩が多く,また,追い越すことになった。 弥陀が池 までほぼ標準タイムで登ったのだから,決して遅くはなかった。久しぶりのきつい登り に,しっかり汗をかいた。 ![]() 弥陀が池 の北西にある 座禅山 の斜面は,かつては シラネアオイ の群生地だった。 シラネアオイ が全く見られなくなってもう10年以上になる。最近になって,電気柵などを設置し, 積極的な保護(復活)処置をスタートさせた。その結果,一部で復活したという話もあるが,実際は どうなのか。 弥陀が池 の北岸で,道から離れた電気柵の中に 青紫色の花 を見つけた。もしかして シラネアオイ かもしれないと喜んだのだが,良く見ると, グンナイフウロ の花だった。残念だったが, グンナイフウロ が見られるようになったことは,環境改善が進んでいることでもあり,近いうちに シラネアオイ が復活するだろうという期待が高まった。 弥陀が池 から 奥白根 に登るには, 座禅山 と 奥白根山 の鞍部まで登り,そこから左に登るのだが,森林限界を出るところに ハクサンシャクナゲ の群落がある。今までも何度かこの時期に奥白根山に登ったが,満開の時期には出会っ たことがない。今年こそはと期待をして行ったが,残念ながら少し早かった。日当たりの良い所な どでいくつかは咲いていたが,蕾の数の方が多かった。蕾の数は多く,今年は特に素晴らしい姿を 見られるだろう。 ![]() 奥白根山 の頂上はかなりの賑わいを見せていた。群馬県側の 丸沼スキー場 が夏場のリフトの運行を始めたので,比較的簡単に登れるようになったためのようだ。 軽装で登ってくる人も多くいたが, 奥白根山 は怖い山だ,なめてかかるととんでもないことになる。天候の急変もあるし,浮き石も 多く,落石の危険もある。くれぐれも慎重に行動して欲しい。美しい山で,悲しい事故を起こして 欲しくない。 山頂に,立派な標識が立った。たしか,群馬県で行われた 高校総体の山岳競技 がここで行われたので,そのためかも知れない。 ![]() 山頂からもう一つのピーク, 奥白根神社 の祠のあるピークに移動すると,急に登山者が増えた。 丸沼スキー場 のリフト終点から,直接にここに登ってくる道があるのだ。簡単に高い山に登れるよう になるのは良いことなのかも知れないが,昔から苦労して登ってきた者にとっては,複雑な心境で ある。 という私も,決してリフト否定者ではなく,日程などによってはリフトやロープウエ イを使うことも多い。ただ, 谷川岳 を数回,ロープウエイを利用して登った後で,ロープウエイを使わずに 西黒尾根 を登ったことがあるが,山頂に立ったときの感激は雲泥の差だった。やはり,自分の足 で苦しんで登った後の爽快感は,他のものには代え難い。 山頂から 避難小屋 の方に下った。その途中, コマクサ を見つけた。奥白根山にコマクサがあるという話は今まで聞いたことがなかった。どう やら,だれかが植えたらしい。本人は,善意でやっていることなのだろうが, 自然の生態系を乱す行為は,やってはいけない。 まだ群生地というほどはないが,一昨年に比べて確実に数が増えている。登山道からも 注意深く見れば確認できるが,あまり知られていないせいか,まだ,荒らされていない。多くの人 に見てもらいたい気がする反面,このまま増やしてしまって良いものなのか,考えさせられるとこ ろだ。 ![]() 奥白根山 から 避難小屋 へ向かう道は, 弥陀が池 からの道と異なり,草ツキの斜面で色々な 高山植物 が花を付けており,私たちを楽しませてくれた。時に ヤマオダマキ の紫色は澄んだ鮮やかさで,その内側の黄色といい対比を見せている。 ![]() シロバナヘビイチゴ は,名前こそヘビイチゴだが,食用のオランダイチゴの仲間で,食べると おいしい。 ![]() 五色沼避難小屋 は,冬期登山の重要な避難小屋だ,栃木県山岳会などが定期的に掃除などを 行っている。 ![]() 避難小屋から右に分かれ,小屋の後ろに回り込んでから,斜面を登り,前白根山に向 かった。尾根に向かって斜めに登っていくコースは,15分ほどで尾根に出る。尾根を少し歩いた 後で,いよいよ 前白根山 への登りにかかる。この登りは,木や草の全く生えていないガレの登りで,日陰が全く ない。ここにきて陽射しが一段と強くなり,半袖シャツから出た腕をジリジリと焼き付ける。足元 だけを見つめ,慎重に一歩一歩進む。 前白根山頂 後ろは奥白根山 ![]() 前白根山頂 は,草の生えていない広場で,ここからの 奥白根山 の眺めは絶品である。足元の 五色沼 から目を上げていくと,まず, ダケカンバ の林が裾を取り巻き,徐々に草地に移っていく辺りから,雨裂が深い溝を刻み,頂上ま で続いている。双眼鏡で覗くと,頂上付近にはまだ多くの登山者がいるのが分かる。頂上直下には 小さな雪渓も見えたが,今年はいつもの年より雪渓が小さい。 ![]() 山頂近くの樹の陰で 昼食 にした。私たち(夫婦)のいつもの山行では,(コースや天候 にも依るが) たっぷり時間を掛けて昼食にする。 シートを広げ,靴を脱ぐこともある。昼食をたっぷりと食べるので,午後の歩き始めが 苦しい。きつい山行の場合には,食事を,少しずつ何回かに分けて食べるようにするほうがいい。 時間も節約できるし,体にもいい。でも,今日はたっぷり食べてしまった。案の定, 午後の歩き出しが苦しかった。 ![]() 五色山 へは,少し下って登り返す。 奥白根山 の勇姿を眺めながらのなだらかな尾根歩きで,とても快適だ。付近一帯に ハクサンシャクナゲ の株がたくさんあり,ここでは満開に近い状況で,たいへんに美しい。 ハクサンシャクナゲ は蕾の時はピンクで,花びらが開くと殆ど白に近くなる。 ![]() シャクナゲ は5枚の花びらの根元が接合している「合弁花」で, ハクサンシャクナゲ では5枚の花びらの中央線付近がピンクに染まっている。しかし,その色も株によって 濃淡があり,花全体がピンクに見えるものから,殆ど白に近いものもある。 五色沼 は,複式火山の火口原に水がたまった 火口原湖 だ。 ![]() 五色山 は,群馬県と栃木県の県境になっている。 ![]() 五色山 から 五色沼 に降りる分岐点の左側の斜面に,電気柵で囲まれた地域がある。植生の保護を目的にし たもので, シラネアオイ が有るかどうか良く見たが,確認できなかった。更に, 五色沼 の北岸にも同じ様な保護区があったが,ここでも シラネアオイ は見つからなかった。 シラネアオイ の名前の基になった 白根山 で, シラネアオイ が見られないと言うのは,なんとも悲しいことだ。かつての大群落を見た記憶が有るだ けに残念で仕方ない。 ![]() 初めに シラネアオイ の危機が叫ばれたのは 「盗掘」 によるものだった。これによって生育場所が少なくなり,次に,増えすぎた シカの食害 が追い打ちをかけた。シカが増えたのも,基を辿れば,人間の勝手な森林伐採により食 料となる草が一時的に増えたためと言われている。これも人災である。一度崩れてしまったバラン スは,その平衡を取り戻すのに長い年月がかかると言うことを今更ながらに思い知らされた。 ページトップへ |