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赤 岳・阿 弥 陀 岳

2003年(平成15年) 8月21日(木)-22日(金)


コース・タイム
8月21日(木)
 宇都宮(12:05) ⇒ 伊勢崎IC ⇒(北関東道)⇒ 高崎JCT ⇒ 藤岡JCT ⇒(上信越道)⇒ 佐久IC ⇒ 白樺湖 ⇒ 美濃戸赤岳山荘駐車場(17:20 車中泊)
8月22日(金)
 駐車場(5:05) → 行者小屋(7:23-42) → 地蔵の頭(8:50) → 赤岳(9:40-50) → 中岳(10:45-59) → 阿弥陀岳(11:35-42) → 中岳コル(12:04-昼食-24) → 行者小屋(13:05-15) → 駐車場(15:20)
 赤岳山荘駐車場(15:33) ⇒ 八ヶ岳山荘(15:45-入浴-16:30) ⇒ 白樺湖  ⇒ 佐久IC ⇒(上信越道)⇒(北関東道)⇒ 伊勢崎IC ⇒ 宇都宮(20:40)

同行者
 妻

 明日22日は,天気予報では久しぶりにというよりこの夏最初の 夏型の天気 を伝えている。この機会に何処かに出かけようと考えていたのだが,せっかくの好天を 近くの山ではもっ たいないということになり, 赤岳 をやることにした。
 かねてから, 赤岳 は,行者小屋か稜線の小屋に 一泊しての計画 を考えていたのだが,日程を詰めてみると, 夜行日帰り でもできないことはないことがわかった。前夜に, 美濃戸 まで入って車中で夜を明かし,夜明けとともに歩き出せば, 赤岳,阿弥陀岳 を廻っても午後3時くらいには戻ってこられる。かなりきつい行程だが,今の体力なら 何とかなる。仮に,途中で動けなくなっても,行った道を帰るコースなので,登頂を諦めて戻れば いいだけの話である。年の功で,引き返すだけの器量も持ち合わせている。と言うことで,赤岳に 出かけた。

8月21日(木)
 赤岳には, 上信越道 佐久IC で降り,あとは 白樺湖 を通って 美濃戸 まで行けばいいのだが,これが,かなりの時間がかかる。自宅から5時間はかかってし まう。
 21日の17時20分には 美濃戸 にある3軒の山小屋のうち真ん中の 赤岳山荘の駐車場 に車を止めた。駐車料金は1日1000円で,美濃戸口の駐車料金が500円なのに比 べると2倍であるが,美濃戸口からの約1時間の道のりを歩かなくて良いことを考えると,やむを 得ないと思った。 50台駐車可能 という駐車場には 約10台 が駐車していた。この時間,殆どの車は無人で,唯一,テントを張っていたグループだ けに人影があった。
 早々と夕食を済ませ,午後7時には横になった。今回は,乗用車の後部座席をたおし, 荷台と一続きになった空間に横になることにした。これまでの山行では,前部の座席をたおし,後 部座席と連続させてそこに横になったのだが,なんとしても寝心地が悪い,そこで,今回は少し工 夫してみた。結果としては,床が固くて痛かったことと,明け方に寒くなったことを除けば快適だ った。次回は,このところをもう少し工夫しよう。
 宵のうち霧が懸かっていたが,間もなく霧も晴れ,星が見えてきた。やがて,下弦を 過ぎた月も顔を出し,空が明るくなった。南の空には,何万年ぶりかで大接近の火星も顔を出し, 一晩中輝いていた。

 8月22日(金)
 明るくなったら歩き出そう と言うことで,3時半過ぎには起きだして準備を始めたが,結局,歩き出せたのは 5時になってから だった。1ヶ月前の 剱岳 の時には4時半には歩き出せたのに,3週間で,確実に 日の出は遅くなっていた


 美濃戸山荘 の前で 赤岳鉱泉 に行く 北沢コース と, 行者小屋 に行く 南沢コース に分かれる。私たちは 南沢コース を進んだ。沢沿いの明るいコースだが,まだ夜が明けきらず,木陰の道になるとかなり 暗い。それでも,道は広くしっかりとしており,歩くのに不安はない。このような道ならば,夜中 にヘッドランプをたよりに歩くこともできるだろう。
 道に沿っていろいろな花が咲いている。 ギンリョウソウ の透き通るような白さが,薄暗さの中で目立っていたが,いつも見慣れたギンリョウソ ウとはちょっと様子が違う。花が上を向いているのだ。写真に撮り,帰宅してから調べると, ギンリョウソウモドキ というらしい。また,晩夏から秋にかけて咲くので アキノギンリョウソウ とも言うと書いてあった。
 ギンリョウソウモドキ (アキノギンリョウソウ)

 サラシナショウマ


 アカバナシモツケ


 南沢 を,右にまた左にと幾度か渡りながら登っていく。


 徐々に高度が上がっていくと,沢の水量は少なくなり,傾斜が緩くなると河原を歩く ようになる。ここまで来て,やっと陽が射してきた。陽に照らされると何となくうれしくなるのだ が,いよいよ暑さとの戦いが始まった。河原沿いの道では ミソガワソウ ホタルブクロ が見られた。ここのホタルブクロは色の薄いものが多い。
 ソバナ (「蕎麦菜」ではなく「岨菜」)

 ミソガワソウ

 ホタルブクロ

 正面に 大同心,小同心 が見えてくる。


 行者小屋の近くで見つけた。  イワアカバナ

 キツリフネ

 トウヤクリンドウ

 行者小屋 まで,標準タイム2時間のところ,2時間20分ほどかかった。特にゆっくり歩いたわ けではないので,標準タイムの設定そのものがかなり厳しいと感じた。帰路も,標準タイム1時間 30分のところ2時間5分かかった。他のところは標準タイムに近い時間で歩けたので,このとこ ろだけ, 標準タイムの設定が厳しすぎる のではないかと思う。
 行者小屋 では登山者が数人が休憩しているだけだった。意外と少ないのに驚いた。行者小屋の水 道のところから,歩いてきた南沢に沿って遠くを見渡すことができる。何気なく見てみると,まず, 槍ヶ岳の穂先 が天を突いているのが目に飛び込んできた。焦る気持ちを抑えながら目を横に移してい くと,大きくU字形に切れ落ちている 大キレット を挟んで, 北穂  そして 涸沢岳 から 奥穂 ,更にその左には 西穂高 の稜線がはっきりと見える。 槍ヶ岳 から右に稜線を辿ると, 常念岳 の三角形を越えて近景の山すそに消える。もう少し登れば3週間前に登った 剱岳 が見えるかも知れない。
 北アルプス南部の稜線

 行者小屋から見た 赤岳

 行者小屋 からは 地蔵尾根 を登った。クサリやハシゴが設置されており,急斜面を一気に登るコースだ。クサリ場 やハシゴはきつい登りには違いないのだが,一気に高度が稼げるので,ザレた斜面を登るよりずっ と登りやすい。高度が上がり, 峰の松目 が低くなってくると,その左の稜線から, 立山 がそして 剱岳 が姿を現した。そして右の稜線からは 鹿島槍ヶ岳 五竜岳 が半分を雲に隠しながら見えてきた。もっと上に上がればよく見えるようになるのだろ うが,雲がわき上がってきており,あとは時間との勝負だ。事実,地蔵の頭に着いた頃には,北ア ルプスの稜線は,雲に隠され,とぎれとぎれになってしまった。 展望は朝が勝負 だと言われているが,正にその通りだ。
 地蔵尾根 を登る。


 地蔵尾根を登りながら見た 硫黄岳


 眼下には,登ってきた 南沢 と,足下に 行者小屋 が見える。

 ガレキ地には トウヤクリンドウ がたくさん見られた。また, タカネツメクサ が多いのも,赤岳の特徴かも知れない。 剱岳や穂高 では タカネツメクサ よりも イワツメクサ の方が多く見られる。
 タカネツメクサ

 イブキジャコウソウ


 赤岳展望荘 には風力発電の風車が並んでいる。行者小屋から見上げたとき,小屋の脇に何本かのポ ールが立ち,その先に光るものがついているのが見え,不思議に思っていたものだ。最近では,ど この山小屋も自然環境に対する取り組みに力を入れ, 風力発電や太陽光発電 などを積極的に取り入れている。 行者小屋 では,屋根に 太陽電池パネル が取り付けられていた。

 地蔵の頭からは 展望荘,赤岳,阿弥陀岳 がよく見える。しかし,赤岳は,東斜面から湧いてきたガスに覆われがちで,なかなか その全容を現さない。反対に,阿弥陀岳の方は極めてよく見える。夏の陽射しを受けて輝いており, 夏山の典型的な姿を見せている。

 赤岳展望荘

 展望荘 から頂上までは急な斜面を一登りだ。
 赤岳 に登るのは,実は 2度目 なのだ。 22年前 の1981年8月10日に赤岳頂上小屋に1泊している。その時は,職場の仲間との山 行で,8月9日に 松原湖から本沢温泉 に入り,翌10日に, 夏沢峠から硫黄岳,横岳 と歩き, 赤岳の山頂小屋 に泊まった。翌日に 真教寺尾根 清里 まで下ったのだ。山頂小屋に泊まった翌日,深い霧に覆われていたものが,歩き出す頃 になると,不思議と霧が晴れ,ジリジリと照らされたことを強烈に印象づけられている。
 登ってきた道を振り返る。 横岳 硫黄岳 が見える。足下の山小屋は 展望荘

 赤岳頂上

 今日は,ほぼ予定された時間通りに歩けているので,最初の計画通り, 阿弥陀岳 まで足を伸ばすことにした。 赤岳 からの下りは,どの方向も急斜面で,クサリやハシゴがある厳しいルートだが,その中 では, 阿弥陀岳 方面は比較的歩きやすいルートだ。赤岳を南に少し下ったところで 権現岳 真教寺尾根 に向かう道と分かれ,右の急斜面を下る。この分岐を左に進み,真教寺尾根道を分ける と, キレット を越えて 権現岳 に向かう。

 ガスの向こうに 阿弥陀岳

 クサリ場 を下る。

 権現岳への分岐

 権現岳 には 5年前 の1998年10月に登っている。この時も好天に恵まれ,楽しい山行ができた。なん とかして懐かしい権現岳が姿を現してくれないかなと祈っていたのだが,なかなか姿を現してくれ ない。阿弥陀岳から戻るときに一瞬だけ姿を現してくれたが,山の形が,どうしても記憶の中にあ る阿弥陀岳の様子と一致しない。記憶にも曖昧さがあるし,その山に立って見る山と,離れてみる 形とは違って見えることが多いのだから仕方にないことだ。 赤岳と中岳の鞍部 に向かう道の途中から,直接に 行者小屋 に向かう道が下っている。今日はこの道を下らずにまっすぐに中岳に向かう。

 斜面はガレており, 下るのには神経を使う。しかし,楽しみがないわけではない。 このようなガレキ地には コマクサ があるのだ。辺りを注意深く探すと,案の定直ぐ近くに何株かの コマクサ を見つけることができた。すでに花の終わっているものも有れば,まだ株が小さく,花 を付けるには数年かかりそうな株もあった。このままそっとしておきたい。
 コマクサ

 中岳と阿弥陀岳の鞍部 からは行者小屋に下る道がある。ここから 阿弥陀岳 に登っても,そのまま 御小屋尾根 を下る人は少なく,殆どの人はこの鞍部まで戻って 行者小屋 に下る。そのため,この鞍部に荷物をデポして空身で往復する人が多い。私たちも,私 の荷物には水と食べ物等が入っているので,そのまま持って登ることにしたが,妻の荷物はここに 置いておくことにした。 阿弥陀岳 への登りは岩場の急斜面でクサリが設置されている。私も妻も岩登りは好きなので,楽 しみながら一気に登り,25分で山頂に立つことができた。

 阿弥陀岳の岩場にはたくさんの高山植物が花をつけていた。 イワベンケイ メノマンネングサ といわれる多肉質の葉を持つ種類が多いのは岩質地帯の特徴である。
 イワベンケイ

 メノマンネングサ

 山頂では, 赤岳 をバックにして写真を撮ったが,赤岳に懸かったガスがなかなか晴れてくれないので, 何度か撮り直しをした。山頂には長居せずに鞍部まで戻り,残りのおむすびを食べた。時刻も12 時を過ぎていたので,下山にかかった。
 阿弥陀岳から赤岳を望む

 行者小屋 まで下る途中でもたくさんの花を見ることができた。さすがに咲き終わったものも多く, もう少し早い時期にくればさぞかしきれいだったろうと想像した。 オトギリソウ はまだ花をつけていたし, ホソバトリカブト は今が盛りだった。  登りでは写真を撮ることが難しかったので,下りでは 写真を撮りながら歩く ことにした。
 オトギリソウ

 ホソバトリカブト


 行者小屋 は,朝と違い,多くの登山者で賑わっていた。これから山頂を目指す人も多く,今夜は 何処かの山小屋に泊まるのだろう。美濃戸まで下る道でも,実に多くの登ってくる登山者とすれ違 った。今日は金曜日,天候の良い週末ということで,待ちかまえていた人も多かったのだろう。
 行者小屋からはもう北アルプスは見えなかった。 行者小屋 から 美濃戸 まではかなり長い道のりだ。しっかりと歩いたのだが2時間以上かかった。もっとも, 写真を撮りながら歩いたので,仕方なかったのかもしれない。
 足を酷使したせいか,右の膝が,曲げるときに痛さを感じるようになった。段差は左 足で踏み切り,右足で着地するようにすれば痛くはないので,できるだけそうなるようにして歩い た。何とか痛みが強くなる前に帰着できた。

 駐車場にたどり着いたのは15時20分。靴だけ履き替えて, 美濃戸口の八ヶ岳山荘 で入浴し,汗を流した。あとは,来た道を戻り,佐久ICから上信越道に乗った。伊勢崎 ICから50号線に出て佐野藤岡ICで東北道に入り北関東道の壬生IC経由で自宅に戻った。
 このような強行軍ができるのも今のうちか。

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