唐 松 岳

期日 2003年(平成15年) 10月1日(土)
 


 
丸山ケルンの上部から見た不帰の嶮。左端に唐松岳の山頂が見えている。


コース・タイム
 10月10日(金)
   宇都宮(21:07) ⇒ 足利 ⇒ 伊勢崎IC(22:35) ⇒ 高崎JCT ⇒ 藤岡JCT ⇒ 長野IC(0:27) ⇒ 白馬(1:09) ⇒ 黒菱(1:30)
 10月11日(土)
     黒菱(6:32) → 黒菱平(6:58) → 八方池山荘(7:28) → 八方山ケルン(7:55-8:05) → 八方ケルン(8:26) → 八方池(8:38) → 扇雪渓(9:24) →
        → 丸山ケルン(9:48-10:11) → 唐松山荘(10:51-55) → 唐松岳(11:15-25) → 唐松山荘(11:40-45) → 丸山ケルン(12:34)→
        → 扇雪渓(12:51) → 八方池(13:26-45) → 八方池山荘(14:18) 
     八方池山荘(14:20) ⇒ (グラートクワッド) ⇒ 黒菱平(14:28) ⇒ (黒菱第3リフト) ⇒ 黒菱(14:38)
   黒菱(14:50) ⇒ おびなたの湯(15:20-16:05) ⇒ 長野IC(17:05) ⇒ 藤岡JCT ⇒ 伊勢崎IC(18:40) ⇒ 宇都宮(20:10)

同行者
    チコ

 8月に剱・立山に登ったとき,特に,2日目の別山から眺めた後立山連峰の姿に感動し,次は,あそこ(後立山連峰)からこちら(剱岳)を眺めてみたいと思った。そこで,9月の連休を利用し,唐松〜五龍の縦走を計画したのだが,台風の襲来で中止となってしまった。今回はそのリベンジである。また,2000年の9月にも八方尾根に登ったのだが,悪天候のため丸山ケルンで引き返してしまった。その意味でもリベンジなのである。季節も進み,昼の時間も短くなったため,また,紅葉最盛期の週末ということもあり,山小屋の混雑を考えて,唐松岳山頂の日帰り往復とすることにした。始発のリフトで登り,最終のリフトに間に合うように下ってくるように計画した。

 
八方尾根への取り付きは,八方からゴンドラ"アダム",アルペンクワッド,グラートクワッドと乗り継ぐのが一般的だが,自動車ならば黒菱まで入ることができ,そこからだと黒菱第3リフト,グラートクワッドの2つで八方池山荘まで入れる。それに,料金も八方からだと片道1400円かかるのに対し,黒菱からだと540円で済む。迷わず黒菱まで車で上がることにした。八方尾根開発KKのホームページによれば,黒菱第3リフトの営業開始時刻は,(10月13日までの土日祝日)午前7時45分となっていたので,それに合わせてプランを立てた。(実際の営業開始は7:40だった)標高差約900m,歩行距離約10km。コースのコンディションが分からないが,下り最終の16時30分までには十分に戻ってこられるだろう。もし仮に,コースコンディションが予想以上に悪く,山頂まで行けなければ,途中で引き返せばいいことなのだ。

 10月9日,10日と,仕事で仙台に出張だった。10日に出張から戻り,支度を整えた。夕食を終え,
午後9時に自宅を出発した。いつもは早朝発や,前夜発でも運転に疲れを感じたことはないのだが,今回はやや疲れが残っていた。宇都宮から国道293号線を走り,足利から県道39号線で伊勢崎ICに向かった。伊勢崎ICで高速に乗ると,北関東道から関越道,上信越道を走り,長野ICまではたいして時間がかからない。長野からは長野オリンピックの時に整備された「オリンピック道路」で白馬八方まで40分だ。八方から黒菱までは,細い山道を登っていく。ガードレールの無いところも多く,慎重に低速で登っていった。黒菱に着いたのは午前1時30分。駐車場には約15台の車が停まっていた。ここで朝まで車の中で仮眠した。疲れていたのか,直ぐに眠りについた。
 5時30分を過ぎると辺りが明るくなり始めたので起きだした。まず始めに目に飛び込んできたのは,屏風のように立ち上がった,鑓ヶ岳と杓子岳の白茶けた山肌だった。まだ薄暗い景色の中で,明るく光っていた。改めて眺めると,右端の白馬岳から杓子岳,鑓ヶ岳,そして天狗岳の稜線が遙か高いところで空と山を区切っていた。


 南東の薄赤色に染まった空を背景にして
八ヶ岳の見覚えある稜線がシルエットとして浮かび上がっている。


 黒菱駐車場 薄雲があるが,まずまずの天気で安心した。夜の間に何台かの車が上ってきており,車は20台ほどに増えていた。

 明るくなるに従って,近くの木々の色の鮮やかさが増してきた。駐車場周辺でもかなり色づいている。

 トイレを探しに歩いてみると,黒菱第3リフトの乗り場があり,営業開始が7時40分と言う張り紙が出ていた。歩き出そうとしている2人パーティーがあったので,話を聞いてみると,今日は唐松岳から阿曾原温泉へ下るという。唐松岳からは反対側の祖母谷温泉へ下れることは知っているが,阿曾原温泉へ下るルートもあるのだろうか。その一人に八方池山荘までどのくらいで登れるのかを聞いてみた。20〜30分位で登れるという。もしそのくらいで登れるのならば,リフトの運行開始を待って無駄な時間を使わなくても済む。改めて地図で確認すると,標高差が約300mであり,30分は無理でも1時間もあれば登れることが分かった。朝食を食べながら妻と相談し,歩いて登ることに決めた。 

 身支度を整え,駐車場を後にしたのは6時30分だった。黒菱平までは,リフトの保守のために付けられた作業道を登っていく。傾斜がきつく,アキレス腱が痛くなった。背後には白馬村の家並みが見える。

 白馬村の向こうの山から陽が昇った。
 振り返ると,幾重にも重なった山並みが背後からの陽射しを受け,山水画を見るような幻想的な光景を作り出していた。

 黒菱平には湿原があり,花の時期の訪れたならばさぞかしきれいだろうなと想像された。八方池山荘まで約1時間かかった。第1ケルンは八方池山荘の手前にある。

 かなり高度も上がり,右手には白馬岳,杓子岳,鑓ヶ岳の白馬三山天狗岳の稜線が近づいてきた。左手奥には,八ヶ岳の特徴的な稜線が遙か彼方ではあるが確認できる。八方山ケルン

 八方山ケルンまで登ってくると,今まで陰になって見えなかった不帰ノ嶮が見えてきた。 天狗のキレットから不帰の喫,不帰の曲,不帰の景と続き,唐松岳へと繋がっている。手が届くほどの近さに,返ってその険しさが倍増して感じられる。そして,いつかあそこを歩いてみたいという衝動に駆られた。


 八方ケルン

 不帰の嶮の喫,曲,景が見えてきた。

 八方ケルンを過ぎ少し登ると八方池が見えてくる。この周辺は紅葉が最盛期で,特に,鮮やかな赤がきれいだった。池には返りに寄ることにして先を急いだ。

 八方池ケルン 八方尾根にはたくさんのケルンが立っているが,このことは,とりもなおさず,荒天時には方向を見失う危険が多いと言うことだ。過去に,多くの遭難事故が発生している。

 尾根伝いに登って,後ろを振り返った。

 少し登り,左手を見ると遙か彼方の八ヶ岳の右奥富士山が姿を現していた。直線距離で172kmも離れているため霞んではいたが,特徴的な姿で直ぐにそれと分かった。富士山は不思議な山である。その姿が見えただけで何となくほっとし,満足感を与えてくれる。

 扇の雪渓はかなり融けてはいたが,まだ残っていた。この上に,また新しい雪が積もるのだろうか。

 扇雪渓からひと登りで丸山ケルンだ。

 更に登っていくと,左に並行する遠見尾根の最上端に五竜岳が見えてくる。そしてその奥には鹿島槍ヶ岳の双耳峰も見えてきた。

 2000年の9月にここに登ったときは,小雨とガスの中を丸山ケルンまで登り,1時間ほど待っていたがガスは晴れず,諦めて引き返した。周囲の山は全く見えなかった。こんなに間近に不帰の嶮や五竜岳が見えるなんて想像もできなかった。
 丸山ケルン
は風邪が強く,通り過ぎて少し登った風かげで休憩にした。 不帰の嶮の右に天狗岳が見える。

  丸山ケルンから少し登り広い尾根に出るとそこからは傾斜は緩くなり,快適な尾根歩きとなる。山頂へ向かうルートが見渡せる。

 振り返ると,歩いてきたルートも確認できる。いつも思うことなのだが,歩いてきたコースを振り返ると,よく歩いたなあと感心するのだ。今日は天気が良く,遙か先まで見渡せる。

 唐松山荘に近づくに従い,鹿島槍ヶ岳五竜岳の背後に隠れ見えなくなる。山荘近くに何カ所か足場の悪いところがあるが,天候も良く,危険ではなかった。

 小さな岩角を右に曲がると,突然に唐松岳山荘が目の前に現れる。と同時に,剱・立山連峰の勇姿が目の前に展開された。小屋の前にリックを置くのももどかしく,剱岳を写真に収めた。


 実際には直線で15kmほど離れているのだが,直ぐ近くに見える。剱岳は近くで見るときよりも雄大で気品に満ちている。周囲の山を従え,盟主として君臨する姿に気高さを感じる。実際には立山の方が標高は高いのだが,距離の関係で,剱岳の方が立山よりも高く見える。

 ザックを小屋の前に置き,カメラだけをもって山頂へ向かった。先刻より,槍ヶ岳を探しているのだが,五竜岳の陰になって見ることができない。たぶん山頂まで行けば見えるだろう。  案の定,山頂の少し手前でついに槍ヶ岳を見つけることができた。

 山頂での記念写真。風が強く,さすがにこの時期の風は冷たい。この時期に初雪が降ることもあるという。
 
後日加筆 3年後の,2006年10月8日には,初雪が1晩で80cm積もり,白馬岳では4人の犠牲者を出す遭難事故が発生した。)

 山頂三角点

 唐松岳山頂からの展望は素晴らしい。まさに360度の展望だ。五竜岳の右肩から前穂が顔を出し,特徴的な吊り尾根が見えた。槍ヶ岳は一際高く天を突き刺し,その健在を誇示している。剱岳は,右に池平山へ続く稜線,左には,剣御前から別山,真砂岳,そして立山三山(富士の折立,大汝山,雄山)さらには薬師岳もはっきり見える。驚いたことには,剣御前と別山の鞍部にある剣御前小舎が小さくではあるが肉眼でも確認できた。

 不帰の嶮の向こうに天狗岳,その向こうには白馬岳が見える。

 足元に見える唐松岳山荘は,さすがに大きく,どっしりとしている。山頂は風が強く,見晴らしを楽しむのもそこそこにして下山を開始した。

 山荘も風が強く,山荘の前に置いてきたザックの上には,登山者の足で舞上げたと思しき砂埃が積もっていた。山荘では記念バッチだけを買い,もう少し下ってから休憩をとることにして先を急いだ。
 時刻は正午を過ぎているのに,登ってくる人が後を絶たない。上り優先でも,あまり譲ってばかりいたのでは先に進めないので,できるだけ近づいてから道を譲ることにして,多少強引に下っていった。今日は連休初日,
唐松岳山荘で泊まる人が多いのだろう。テントを担いだパーティーも多かった。八方池まで降りてきた。

 八方池は観光客で大にぎわいだ。八方池まで下ってくると,周りの人の様子が一変する。登山者から観光客になるのだ。履き物・服装が登山者とは違う。リフトの終点から1時間ほどで来られるのだから,無理もないが,しかし,足場は必ずしも良い所ばかりではない。大きな岩がゴロゴロしており,足拵えがしっかりしていないと,けがをすることにもなりかねない。
 下りもリフトを使わず歩いて降りることも考えたが,降りた後のことも考えて,リフトを使うことにした。リフトはまだ混雑してはいなかった。
リフトは駐車場めがけて下っていく。

 2つのリフトを乗り継いで黒菱に着いたのは午後2時40分だった。予定より随分早く降りてこられた。
 八方で
温泉にはいることにしたが,何処にしようかと考えて結局HPで紹介されていた「おびなたの湯」に行った。ここは露天風呂が特徴と書いてあったが,実は露天風呂だけで,洗い場も少なく,混雑しており,ちょっと期待はずれだった。次回は,別の温泉に入ろう。
 帰路は,伊勢崎ICまで往路を逆に辿り,県道39号線から国道50号線を辿り,佐野藤岡ICから東北道に乗り北関東道の壬生ICで降り自宅に帰った。往復の走行距離は564km,それほど強行軍という印象はなかった。

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