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社  山

2004年(平成16年) 5月8日(土)


コース・タイム
 宇都宮(6:50) ⇒ 歌ヶ浜駐車場(7:55)
  歌ヶ浜(8:10) → 狸窪(8:55) → 阿世潟(9:13) → 阿世潟峠(9:33-40) → 社山(10:55-11:08) → 昼食(11:55-12:33) → 阿世潟峠(13:05) → 阿世潟(13:26) → 狸窪(13:56) → イタリア大使館公園(14:20-15:08) → 歌ヶ浜(15:21)
 歌ヶ浜駐車場 ⇒ 宇都宮

同行者
 妻

 今日は天気予報では良い天気になるという。 宇都宮 も朝早くは曇っていたが,出発の頃は薄日も射してきた。道路は空いている。1時間と 少しで 歌ヶ浜の駐車場 へ着いた。
 車を降りて驚いた。湖の対岸に残雪をまとった 白根山 が悠然とそびえている。今までにもここには何度か来たことがあるが,こんなに間近く 白根山が見えるとは思っていなかった。

 今日登る 社山 がピラミッドのようだ。


 駐車場では, 小学生 が10人ほど集まっていた。この子どもたちとは,途中まで前後しながら歩いた。後で 聞いたのだが, 中宮祠小学校の5年生 ということで,男の先生に連れられて 社山 に登るという。 駐車場には オオヤマザクラ が咲いていた。

 駐車場を出て,湖畔の道路を 阿世潟 に向かって歩いた。約1kmほどで,砥沢にある 「イタリア大使館別荘跡公園」 に着く。
 ここは, 旧イタリア大使館別荘 を栃木県が譲り受け,修理をした後, 日光自然博物館 が管理して一般公開している。見学は無料だが, 維持管理のための募金 に協力を求められる。記念公園は,旧別荘を中心に,公園として整備され,きれいな公 衆トイレもある。山歩きをする者にとって,トイレの情報は重要である。

 記念公園に咲いていた アズマシャクナゲ

  ヒゲネワチガイソウ

 さらに少し歩くと 「狸窪」 に着く。 「狸窪」 と書いて 「むじなくぼ」 と読む。 「むじな」 にはれっきとした 「狢」 という文字があるのだが,ここではなぜか 「狸」 「むじな」 と読ませている。 ムジナ は動物学的には アナグマ のこととされているが, タヌキ ヤマネコ のことなどもムジナと呼ぶ地方もあり,面白い。栃木県では有名な 「ムジナ,タヌキ裁判」 」の事例もあり,興味が尽きない。
 「ムジナ,タヌキ裁判」 とは
 大正14年のある日,栃木県大萩村の猟師橋本伊之吉は猟に出,運よ くムジナを仕留めた。ところが3月1日以降は禁猟となっているタヌキを捕らえたとして「狩猟規則 違反」の罪で訴えられ,罰金20円に処せられてしまった。裁判に納得できない伊之吉は,「自分が 捕らえたのはムジナであってタヌキではない」と大審院に控訴した。大審院は専門の学者に意見を 聴いた。学者によれば,地方によりタヌキのことをムジナと呼んだり,アナグマのことをムジナと 呼んだりして,呼び方に錯綜があると言うのだ。概ね,東日本ではムジナ,西日本ではタヌキと呼 んでいる傾向がある。その結果,伊之吉は無罪となった。
 一般に タヌキ汁 はアナグマの肉を用いたもので,秋口からの肉は脂がのってコクがあり,実においしい ものだという。一方,タヌキは肉が少なく,モミの葉の様な匂いの強い植物を食べているので肉は 臭くてうまくない。
 狸窪 には 2軒の民宿 があり,関係者の車はここまで入ることができる。ここから,半月峠に登る道が分かれ ており,1時間ほどで半月峠に着く。
 更に湖畔の道を奥に30分ほど歩けば 「阿世潟」 に着く。ここにはかつて キャンプ場 があり,夏休みなどには賑わっていたが,今は廃止され,近くに キャンプすることも禁止され ている。 おかげで,すばらしい環境が維持されている。環境の保護と活用は矛盾した部分もあり, どこに折り合いを付けるかは難しい問題だ。
 阿世潟 からは,湖畔のルートに分かれ, 阿世潟峠 に向かって登っていく。峠に近づくに従い傾斜が急になるが,歩道はよく整備され,歩 きやすい。

 咲いている花は少なかったが, オオカメノキ の白い花が印象的だった。

 20分ほどで阿世潟峠に着いた。 阿世潟峠 は南方が開けた明るい峠だ。

 峠の 南側(足尾側) には大きな木が少なく,笹原が広がっている。爽やかな風が気持ちいい。ここからは尾 根歩きになる。足尾側が崩れた場所が何カ所かあり,日光側に道が付け替えられている所もあった。

 アカヤシオ が散り残っていた。殆どのアカヤシオは時期が過ぎ,花びらが残っていたものは少なか った。

 足尾側の斜面 は大きな木は生えていない。足尾の 鉱毒 の事実を伝える証人だ。

 なだらかな 尾根路  薄日を浴びながらゆっくりと歩く。このコースは,急な登りは少ないが,山頂までには いくつかのコブを越えていかなければならない。
 歩いてきた道を振り返る

 山頂が近づくと カラマツ林 が出てくる。ちょうど葉が芽吹き始めたところで,きれいだ。カラマツの 雌花 を探しながら歩いたが,見つけることはできなかった。


 山頂には,県内の山に自作の山頂プレートを着けて歩いている 山部藪人 さんが付けた標識があった。
 山頂は見晴らしが良くないとガイドブックに書いてあったが,木が葉を落としている この時期には,かなり見晴らしはいい。
 山頂を過ぎて少し行くと開けた場所に出る。ここからは,尾根伝いに行く 黒檜岳 へのルートが見渡せる。

 来た道を少し戻ったところで,朝一緒になった 中宮祠小学校の5年生グループ が登ってくるのに出会った。 写真を撮ったので,後で送ってあげることにした。先生に引率されて地元の山に登るこ とができるのは幸せなことだ。

 中禅寺湖 が見下ろせる斜面に腰を下ろし,昼食にした。 中禅寺湖 と,対岸に聳える 男体山 が広角レンズでないと入らない広がりで目の前にある。湖面を,遊覧船が滑るように走 り,白い跡を残していく。 とても心の満ち足りた時間を過ごすことができた。
 今日は,気温がかなり上がり,汗もたくさんかいた。しかし,風は程良い冷たさで, 私を元気づけてくれた。午後からは雲も多くなり,陽射しの遮られる時間が長くなった。
 帰路, イタリア大使館別荘跡記念公園 で休憩し,コーヒーを沸かして飲んだ。その間に,旗を持ったバスガイドに案内された 団体旅行の一行がやってきた。ここは,歌ヶ浜の駐車場から観光客が歩いて来られる場所なのだと いうことを改めて認識した。

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