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燕 岳-常 念 岳 縦 走

2004年(平成16年) 7月27日(火)-31日(土)




コース・タイム
7月27日(火)
 宇都宮(18:00) ⇒ 壬生IC ⇒ 伊勢崎IC(20:00) ⇒ 高崎JCT ⇒ 藤岡JCT ⇒ 豊科IC(22:00) ⇒ 中房温泉駐車場(23:00-仮眠)
7月28日(水)
  中房温泉駐車場(5:25) → 登山口(5:35-45) → 第1ベンチ(6:23) → 第2ベンチ(7:07) → 第3ベンチ(7:51) → 冨士見ベンチ(8:50) → 合戦小屋(9:25-51) → 合戦の頭(10:20) → 燕山荘(11:20-昼食-12:25) → 燕岳(12:47-13:25) → 燕山荘(14:00-泊)
7月29日(木)
  燕山荘(6:25) → 大天井岳(10:24-30) → 大天荘(10:40-昼食-11:10) → 東天井岳 → 横通岳 → 常念小屋(13:00-泊)
7月30日(金)
  常念小屋(6:20) → 常念岳(7:50-8:00) → 常念小屋(9:00-20) → 最後の水場(10:15) → 昼食休憩 → 一の沢ヒエ平駐車場(13:45)
 駐車場(14:30) ⇒ 白馬ペンション林檎の樹(16:00-泊)
7月31日(土)
 白馬 ⇒ 長野善光寺 ⇒ 宇都宮

同行者
 キクさん,T子さん,妻

1 計画から登山口まで
 今年の夏のメインは, から 表銀座 を縦走し, まで行く計画を立てた。キクさんから,夏のメインは一緒に行きたいと言われていたの で,T子さんも誘い,4人で行くことにした。
 妻の足の状態が完全ではなく,一緒に行くことができるか,出発の直前まで心配だっ た。
 しかし,出発までにかなり回復したので,完全に不安が消えたわけではなかったが, ダメならば引き返す覚悟で一緒に行くことにした。
 出発が近づくと, 台風 が南方海上に発生し,その動きが気になってきた。移動速度が遅いので,進路を予想す ることが難しい。とりあえず1〜2日間は天気は持つだろうと判断し,予定通り出かけることにし た。

 7月27日(火) 
 19時に,キクさんT子さんと宇都宮の自宅で待ち合わせ私の車で出発。宇都宮から は上信越道路を通り,更埴ジャンクションから長野道に入り,豊科インターで高速を降りた。順調 に走り,23時過ぎに 中房温泉第一駐車場 到着した。駐車している車は 30台程度 でまだ余裕がある。女性2人は車で,男性2人はテントに分かれて朝まで仮眠した。

2 燕山荘まで
 7月28日(水)
 駐車場 を出発


 5時出発の予定が,準備にてまどり,登山口から登りだしたのは 5時30分 を廻っていた。登山者は少なくなかったが,列を作るほどではなく,自分のペースで登 ることができた。今日の予定は,計画では, 燕岳 に登り, 大天井岳 の大天井ヒュッテまでとなっていた。
 合戦尾根は 「北アルプス三大急登」 の一つと言われている。名前通りの急登だが,登山道は良く整備されており,歩きにく い所はない。
 ちなみに  「北アルプス三大急登」 は,
 ・ブナ立尾根(烏帽子岳) ・ 赤岩尾根(鹿島槍ヶ岳)  ・ 合戦尾根(燕岳)  の3つ
 一方 「日本三大急登」 は,
 ・ブナ立尾根(烏帽子岳) ・ 黒戸尾根 (甲斐駒ヶ岳) ・ 西黒尾根 (谷川岳)  の3つ  (諸説ある。)
 第一ベンチ

 第二ベンチ

 第三ベンチ


 冨士見ベンチ

 第一ベンチ,第二ベンチ,第三ベンチ,冨士見ベンチ と,順調(自分としては)に登っていった。 合戦小屋 到着は9時25分。 名物のスイカ は8分の1カットの1切れ800円と,チョット高いが,大きな切り身で,甘く,十分 に満足した。
 合戦小屋 名物のスイカにかじりつく

 合戦小屋 を出発

 小屋から少し登ると, 槍ヶ岳の穂先 が見えてくる。 

 合戦の頭 は小さな広場で,ここまで来ると周囲の山々が見えてくる。


 進行方向に 燕岳山頂 が見える。

 ここから 燕山荘 までの登りは,天気が良かった分,体力の消耗が激しく,急に速度が落ちた。 燕山荘 に着いたのは11時25分だった。
 小屋の前に飛び出すと,突然,目の前に 北アルプス の心臓部が姿を現した。 野口五郎岳 から 鷲羽岳,双六岳 へと続き,左端には,周囲を押さえ,一際鋭く, 槍の穂 が天を突いて聳えている。思わず,時間の経つのを忘れ,見入ってしまった。  

 燕山荘前からのパノラマ写真  写真をクリックすると,大きな写真が見られます。


 ここで, この後のコース について結論を出さなければならない。一応私がリーダーなので,私の責任で判断し, 決定しなければならない。計画では,この日 大天井ヒュッテ まで行くことになっている。時間的に不可能ではないが,かなり遅くなることを覚悟し なければならない。それより大問題なのは, 台風の影響 がどうなるかだ。小屋で仕入れた台風情報によれば,進行速度が遅く,影響は続くよう だ。 「高い山では1000kmの遠くから台風の影響が出る」 と言われており,私は, 「明日からは天候が崩れ,その状態が2〜3日続く」 と結論した。この判断に基づいて,今日,大天井ヒュッテまで行けても,翌日に槍ヶ岳 まで行くことは難しいだろうから, 槍ヶ岳を断念 し, 常念岳までの縦走 に変更することにしたした。
 そうと決まれば先を急ぐことはない。この日は 燕山荘 に泊まることにして, 燕岳 までゆっくりと往復した。
 山頂までの砂礫地にはたくさんの コマクサ が咲いていた。小さな株までもが精一杯に花を咲かせている。思わず「がんばれ」と声を 掛けたくなる。
 燕山荘から眺めた燕岳山頂


 白い砂ハイマツの緑が美しい

 山頂付近には 奇岩 が林立している。ここは メガネ岩

 槍 をバックに大満足の私


 しかし,一方で, 情けなくなるような光景も 目に入ってきた。いくつもの足跡が,張られたロープを乗り越えて コマクサ の近くまで伸びているのだ。多分,写真を取りに行ったのだろうが,あまりにも自分勝 手な行動に腹が立った。
 少なくとも,この高さまで登ってくる人は,自然に対する認識は,一般の人よりある はず。その人がどうしてこんなことをするのだろうか。その矛盾にどうしても納得できなかった。
 山頂付近から, 燕山荘 を眺める。


 山頂 での記念撮影

 燕山荘 に戻って,ビールで乾杯



今日出会った花たち



 テガタチドリ

 ハクサンフウロ

 エゾシオガマ

 チシマキキョウ

 コマクサ

 コマクサ

 コマクサの群落

 ミヤマアキノキリンソウ

 珍しい  白花のコマクサ



3 常念小屋まで
 7月29日(木)
 日の出 の時刻は4時50分頃。待ちきれず,4時半頃には小屋の前に出てご来光を待った。眼 下には 一面の雲海 が広がっており,荘厳さを感じさせる。やや強めの風が吹き, 寒い

 たなびいている雲の上端が 明るい線で縁取られる と,その一点が オレンジ色に光り出し やがて,その光が広がり,高度を増していく。カメラを構えたまま,夢中でシャッター を切り続けた。

 早朝には美しい日の出を見ることができたが,時間が経つにつれて徐々にガスが上が ってきて,小屋を出発する頃には,当たり一面 ミルク色の世界 になってしまった。同宿者の中には 槍を目指して出発して いくグループが多く,羨ましい気持ちが無いわけではなかったが,自分の判断を信じて 常念へ向かう と心に決めた。
 ガスの中をまずは 大天井岳 を目指して 出発 した。 視界は10mから50m程度 で,踏み跡を頼りに足を進めた。唯一の慰みは,多くの 高山植物 に出迎えられたことだ。特に, コマクサ の可憐さには心を和まされた。

 蛙岩 (ゲーロ岩)

 木の ハシゴ を下る

 いくつかの登り降りを繰り返し, 切通岩 小林喜作のレリーフ を過ぎると, 大天井岳 への最後の登りだ。


 足元を見つめながら,一歩一歩登ると,間もなく 大天荘 の前に出る。まずは,ここに荷物をデポし, 山頂 を目指す。
 雷鳥 が出迎えてくれた

 大天井岳山頂
 大天井岳 でも視界は全くなく,早々に 大天荘 に戻って昼食を食べることにした。

 大天荘 の前で昼食,霧の粒が大きくなってきた 
 燕山荘 で作った弁当は,もち米のおむすびで,おいしく,腹持ちも良いものだったが,まだ, あまり腹も空いて居らず,半分だけ食べて,残りを途中で食べることにした。


 大天荘 前で 槍ヶ岳 方面に向かう道を分け, 常念小屋 に向かった。霧の粒がだんだんと大きくなり,雨具を付けようかどうかで迷った。メン バーは,それぞれ,自分の身体の状態と経験に基づいた判断で雨具を付けて,あるいは付けずに歩 いた。
 景色の見えない中で黙々と 常念小屋 を目指して歩いた。でも,ものは考えようで,おかげで の心配も無かったし太陽の直射による体力の消耗もなかったので,これは意外とラッキ ーだったのかも知れない。
 ただ,コースの中で,何カ所か,大きな岩がゴロゴロしたところを通過するところが ある。岩の上には 足跡が付きにくい ため,ルートがはっきりしない。そのため,ガスに覆われると,方向が分からなくなり, 道に迷いやすくなる  特に,岩が雨で濡れると,足跡がますますわかりにくくなり,ルートファインディン グにはかなりコツが必要になる。 このコースには殆ど「赤ペンキ」などのマーキングがない  個人的には,このことは賛成だが,経験の浅い人には厳しいだろう。
 常念乗越までやってきて, 横通岳 を振り返った。足元に,常念小屋の屋根が見える。

 辺りを包んでいたガスが薄くなり, 常念岳 が見えた。

 常念小屋 に着く頃には,雨粒がかなり大きくなっていた。小屋では 乾燥室 がフル稼働しており,濡れたものを乾かすことができた。
 雨はだんだんと強くなり,夜半には雨粒が小さな窓ガラスをたたいた。明日は,雨の 中を下山しなければならないだろうと,誰もが覚悟を決めた。


今日出会った花たち



 トウヤクリンドウ


 チングルマ の実


 タカネナデシコ


 グンナイフウロ


 ヒナコゴメグサ


 イワツメクサ


 タカネヤハズハハコ


 チングルマ の実


 ヨツバシオガマ


 ウサギギク


 オトギリソウ




4 常念岳へ
  7月30日(金)
  ガスっていた空が,出かける頃になってとぎれてゆき, 青空が見えるようになってきた。   真っ直ぐ下るつもりだったが,急遽, 常念岳の山頂をピストン してから下ることにした。
 
 相変わらず, ガス が塊状となって流れていたが,そのガスの切れ間に,昨日は見られなかった山々が姿を 現した。なだらかな頂を持つ 大天井岳 ,その左の鞍部に 大天井ヒュッテ が見え,その左の山腹をトラバースしたあとは,稜線に沿って付けられた 縦走路 が見える。
 常念小屋と横通岳

 縦走路を左に辿っていくと 西岳 の左肩に ヒュッテ西岳 が見える。 喜作新道 はここから向こう側に折れ曲がり,下って行くため見えなくなる。
 ヒュッテ西岳 の背後には 東鎌尾根 が真っ直ぐに 槍ヶ岳 に向かって登っていく。かなりの急傾斜で,嶮しい様相を見せている。 槍ヶ岳 から左に, 大喰岳,中岳,南岳 と連なり,大きなU字形の 大キレット を挟んで 北穂高岳,涸沢岳 ,更に白出ノコルの左には 奥穂高岳 ,吊り尾根を挟んで 前穂高岳 まで一大パノラマが繰り広げられている。しかし,残念ながら,いずれも山頂付近はガ スに覆われており,全容を見ることはできなかった。
 西岳の向こうに槍ヶ岳 の穂先

 常念岳 にも時折ガスが流れてきて,一面が真っ白になった。東には低い位置に太陽があり, 「ブロッケン現象」 も見ることができた。

 山頂 での記念撮影 

 山頂から眺めた 大キレット  キレットの背後の山は 白山

 いよいよ下山開始
 9時20分 ,いよいよ登山口に向けて下山を開始した。 一の沢 の上部は急斜面だが,一面のお花畑であり,満開の花を写真に納めながら,下っていっ た。

 一の沢上部
 振り返って見た 登山道  良く整備されている。


 一の沢登山口

 それまで太陽の直射を受けていたものが, エボシ沢 の辺りから急に 黒い雲 に覆われ,雨が降ってきた。一時はかなり激しい降りとなり,登山道にも雨水が流れた。 20分ほどで雨も止み,また,太陽が照りつけてきた。 ヒエ平 に着いたのは14時10分だった。
 今回,中房温泉からヒエ平まで, 自家用車の回送サービス を利用した。金額はやや高めだが,縦走をする場合にはかなり便利だ。
 このまま帰宅することも可能だが,安全のために白馬のなじみのペンションに1泊し, 疲れを取ることにした。


今日出会った花たち



 オヤマノリンドウ

 センジュガンピ

 クガイソウ

 ホソバトリカブト

 シシウド

 タマガワホトトギス

 タケシマラン の実


 シモツケソウ

 ヤマボクチ


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