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地 蔵 ヶ 岳

2004年(平成16年) 8月26日(木)-29日(日)


コース・タイム
8月26日(木)
 自宅(13:25) ⇒ 壬生IC ⇒ 川口JCT ⇒ 大泉IC ⇒ 調布IC ⇒ 韮崎IC ⇒ 青木鉱泉P(18:10-車中泊)
8月27日(金)
 青木鉱泉(朝食-6:22) → 南精進ヶ滝(8:35-9:00) → 白糸の滝(11:00) → 五色の滝(12:00) → 鳳凰小屋(13:10-昼食)
8月28日(土)
 鳳凰小屋(6:15) → 地蔵ヶ岳(7:00-05) → アカヌケ沢ノ頭(7:15) → 鳳凰小屋(7:45-8:20) → 燕頭山(つばくろやま)(9:55) → 御座石鉱泉(12:25-昼食)
 御座石鉱泉 ⇒ 青木鉱泉 ⇒ 御座石鉱泉 ⇒ 白馬(林檎の樹)
8月29日(日)
 白馬 ⇒ 松本(松本城) ⇒ 宇都宮

同行者
 妻

 今年の夏山の締めくくりとして 鳳凰三山 を計画した。鳳凰三山というと, 夜叉神峠 から縦走するコースが一般的だが。車で行くとなると,ちょっとルートがとりにくい。 そこで, 青木鉱泉 から ドンドコ沢 をピストンすることにした。 ドンドコ沢 は,色々なレポートを読むと,高度差と距離があり,かなり厳しいコースのようだが, 急がなければ十分登れると判断した。
 当初,8月22日の夜に出発し,23日に登る計画を立てたが,天気予報がが思わし くないので延期し,26日に,仕事が終わりしだい出発することにした。
 ところが,妻の足が,3日ほど前から再び痛み出した。8月9日には 奥白根山 にも登り,何とか歩けるだろうと考えていたのだが,このまま実行すべきかどうか迷っ た。本来ならば,山行を中止すべきなのだろうが, 行けるところまで行ってだめなら戻る つもりで,出かけることにした。
 韮崎方面から鳳凰小屋 に行くコースとしては, 青木鉱泉からドンドコ沢を登る コースと, 御座石鉱泉から燕頭山コース の2つある。また, 中道を通って薬師小屋に行くコース もある。これらの中から登り道と降り道を選べばいい。実際に歩いた人のレポやアドバ イスを参考に,急登だが 滝を見ながら 登れる ドンドコ沢コース を登ることにした。一応,2日目には 観音,薬師を廻り,中道を下る 計画を立てたが,これは多分無理だろうと思っていた。妻の足のことを考えると, 鳳凰小屋 まで行ければそれで十分だと思った。

8月26日(木)
 仕事は午前中で終わったので,自宅に戻って荷物を積み込み出発した。中央高速の 韮崎IC まで,どういうコースをとったらいいか考えたが,オーソドックスに 東北道から外環に入り大泉から下を走って調布ICから中央道に入っ た。  韮崎ICで高速を降り,青木鉱泉のHPで見た 「新しくできた道」 を通って青木鉱泉の駐車場まで進んだ。18時10分,暗くなる前に到着した。
 車の 後部座席 を畳んで寝る場所を確保してから,夕食の準備にかかった。夕食は,途中の コ ンビニ で買ってきた弁当を,カンビールを飲みながら食べた。今回は 寝袋 を持ち込んだので,寒いことはなかった。トイレは駐車場から少し離れたところにあっ たが, 水洗できれい だった。駐車場に停まっている車は自分のを含めて 4台  うち1台は近くにテントを張ってその中で寝ていたが,残りの3台は,車内で夜を明 かした。

8月27日(金)
 朝は5時少し前に起きた。まず,湯を沸かし テルモス に入れ,残りのお湯で スープリゾット を作り パン と一緒に食べた。
 身支度をして, 6時10分に駐車場を出発 した。 青木鉱泉 で登山計画書をポストに入れ, 登山口 を出発したのは 6時20分過ぎ。天気は,雲は多めだが陽射しはあり,暑くなりそうだっ た。


 妻の足の具合を確認するようにゆっくりと歩き始めたが,もう既に痛みがあるという。 今日は 鳳凰小屋 まで行くのは無理だろうと思った。とりあえずは, 南精進ヶ滝 まで行って戻るつもりで登り始めた。
 コースは, ドンドコ沢の左岸 に沿って付けられている。2万5千分の1地形図では,一度右岸に渡るようになってい るが,実際には左岸だけを登っていく。
 約2時間と少しで, 南精進ヶ滝 まで来た。50mほど脇に入ったが,木の枝がじゃまをしていて滝の姿はよく見えない。 妻の足は少しずつ調子が上がってきて,ゆっくり行けば 鳳凰小屋 まで行けそうだという。そこで目標を鳳凰小屋に変更し,先に進むことにした。


 ドンドコ沢コース は,このような枝沢をいくつか越えていく。

 鳳凰の滝 はパスした。
 白糸ノ滝 は「どこが白糸?」と思いたくなるような 豪快 な滝だった。

 タカネビランジ をこの山行で初めて見た。

 登っていくと 五色ヶ滝 の分岐標識があったので,そこから沢に降りていった。ところが,かなり進んでもなか なか滝が見えてこない。沢を飛石伝いに反対側に渡って初めて全体が見えてきた。道は更に奥まで 続いていたが,ここで引き返した。
 登山道に戻って更に登っていくと,再び 五色ヶ滝 の標識が現れた。ここからだと,斜面を少し下っただけで全体が見渡せた。先ほどの標 識から入る必要は無かったのだ。時間と体力をかなり無駄遣いしてしまった。

 妻の足の具合はだんだん 悪くなって いった。休憩をとればその後少しの間は痛みが和らぐが,歩くと痛んでくる。やはり, 小屋まで行くのは無理だったのか。小屋まで行けると判断した自分の 判断ミス かも知れないと思ったが,ここまで来てしまったのだから,何とか小屋までたどり着か なければならない。
 鳳凰小屋の周囲には ヤナギラン がいっぱい

 休み休みで,何とか 鳳凰小屋 にたどり着くことができた。 青木鉱泉 発6時25分, 鳳凰小屋 着13時10分で,7時間かかった。とにかく,小屋までたどり着けて良かった。明日の降 りのことが頭をよぎったが,休養することで回復することを願った。
 とりあえず今日はここまでということで,受付をすませ,小屋に入って自分の 寝場所を確保 した。今日の宿泊客1番乗りだった。部屋には窓はなく,電気も点いておらず,真っ暗 で,ヘッ電を点けないと作業ができない。
 着替えてテラスに出てビールで乾杯。残りのおむすびを食べた。このテラスからは 携帯電話 が繋がる。時々ガスがかかるが晴れ間もある天気で,気分がいい。
 夕食は5時30分。ここのメニューは カレーライス と決まっているが,お代わりができる。あまり空腹でもなかったので,お代わりは遠慮 した。 トイレは別棟で,古典的なもの  夜中には行きづらい。この晩の 宿泊者は15人 で,女性は妻1人だった。
 南アルプスの山小屋 は,北アルプスの山小屋とは大きな違いがある。南アルプスでは 数十年前のスタイル がいまだに残っている。南アルプスでは,北アルプスと違い,まだまだコースが知られ ておらず, マニアの世界 なのだろう。したがって山小屋は,食べて寝られれば良く, 快適さなどはあまり求めない ようだ。もっとも,登山者が少なく,設備の改善などは,経営的にも難しいのだろう。
 小屋の主人の態度も特徴的だ。(北アルプスでも一部には残っているようだが)主人 の態度は 極めて横柄高圧的 で, 「泊めてやるから言うことをきけ!」 という姿勢で接してくる。確かに,ルールを無視する輩には厳しく接することは必要だ が,私など,気が弱いから,びくびくしながら,小屋主の顔色をうかがうことになってしまう。
 夕食時,主人が得意げに話を始めた。 他の山小屋の悪口や愚痴が多く,聞いていて楽しくない。 現在はこれだけ多くの情報が流れており,山小屋の親父の話を有り難がって聞く時代で はない。 燕山荘の赤沼オーナーの話 はとても面白かったのと対照的だった。
 そんなことを含めて,この山小屋は極めて印象的だった。

8月28日(土)
 前日夕刻から 土砂降りの雨  そんな雨が一晩中続いた。登頂を断念し,カッパを着て雨の中を下山しなければなら ないことを覚悟した。
 しかし,夜明けとともに雨は止み,一面濃いガスに包まれた。
 朝食を食べ,下山の準備をしていると,一瞬ガスが晴れ,青空が顔を出した。この調 子なら, 地蔵ヶ岳 に登れるかも知れない。急遽 地蔵ヶ岳をピストンして から下山することにした。
 妻は,足の具合から,下山に備えて小屋で待機することで,私だけが行くことにした。
 軽装の単独行は意外とペースが掴みにくい。スタートの飛ばし過ぎで直ぐに息が切れ た。それからは無理をせず,自分の身体の言うままに登った。
 20分ほど登ると山頂が見えてきたが,それからの ザレ場 が苦しい。それでも,昨夜の雨のせいで,砂が締まっており,いつもよりは歩きやすか ったらしい。
 雪渓の登りのように,足をV字型に開き,内側のエッヂを効かせて小さな歩幅で登る。 山頂 は見えているのになかなか近づかない。山頂が見えてから到着するまで,かれこれ20 分もか かってしまった。

 まず,地蔵ヶ岳の方に向かった。 オベリスク にはロープが懸かっているので,登ろうとすれば登れないことはないと思った。でも, 今日は単独行でもあり,時間の関係もあるので遠慮することにした。


 オベリスク 直下の 本尊 まで行って引き返した。登山者は誰もいない。地蔵ヶ岳独り占めである。
 地蔵ヶ岳の本尊


 賽の河原 は,多くの地蔵さんが立ち並ぶ独特の風景だ。 小授け地蔵 と言われ, 一体 を担ぎ降ろして祈願し,めでたく子どもが授かったらば 二体にして 担ぎ上げて納めるのだそうだ。古いお地蔵さまもあったが,比較的新しい物が多かった のが印象的だった。この信仰が現在も生きている証拠である。


 賽の河原 から眺めた 地蔵ヶ岳 のオベリスク

 地蔵ヶ岳より眺めた アカヌケ沢の頭

 思ったより早く着いたので, アカヌケ沢の頭 まで行くことにした。賽の河原から5分ほどでいける絶景ポイントだ。しかし,徐々に ガスに覆われ,頭に着いた頃は一面のガスパノラマだった。 甲斐駒ヶ岳 北岳 の見える(はずの)方向に向けてそれぞれ写真を撮った。
 ハイマツの中の ナナカマドの実 が真っ赤になっていた。

 タカネヒゴダイ


 山頂からの降りは早かった。ザレ場は大股で滑るように下った。アカヌケの頭から小 屋まで30分だった。
 シラヒゲソウ (鳳凰小屋周辺)  珍しい花だ。昨夜降った雨の滴が付いている。

 イワインチン (鳳凰小屋周辺) 


 タカネビランジ (鳳凰小屋周辺)

 ホウオウシャジン (鳳凰小屋周辺)鳳凰山系だけに見られる稀少種 

 小屋で小休止し,いよいよ下山にかかった。

 御座石鉱泉に下る のは,昨日のうちに決めていた。別に山小屋の親父に言われたからではない。ドンドコ 沢のコースは,昨日登ってみて,段差が大きく,下るのには 膝に負担がかかりすぎる と判断したのだ。事実,御座石温泉に下る 燕頭山 (つばくろやま)コースは歩きやすいコ ースだった。
 セリバシオガマ  白い小さな花がかわいい。特徴的な葉で区別できる。

 崩壊地に点けられた 木製の階段 も,崩れてくる砂で半分近くが埋まっている。


 他にも,朽ちて崩れたハシゴなどがたくさんあり,これを整備すれば更に歩きやすく なるのだが。
 ダイモンジソウ


 燕頭山 には標識があったが, 西ノ平 は気付かずに通りすぎてしまった。


 足をいたわりながら,(妻だけでなく私も)ゆっくり降りたが,4時間ほどで 御座石鉱泉 まで下ることができた。
 レンゲショウマ  薄紫の花が美しい。ドンドコ沢コースでもいくつか見られたが,燕頭山コースの方が 多く見られた。

 マツモトセンノウ
 フシグロセンノウ は,葉の付け根の茎が黒くなっている。これは,黒くないので マツモトセンノウ 

 御座石鉱泉 で, 鳳凰小屋 で作ってもらった弁当を食べた。空腹だったので,残らずおいしく食べた。
 御座石鉱泉 から 青木鉱泉 まではバスで移動するつもりでいたが,次のバスまで1時間以上もある。そこで,温泉 に入りに来た人に頼んで,私だけ青木鉱泉まで乗せてもらった。青木鉱泉から妻をおいてきた御座 石鉱泉まで戻り,帰途についた。
 下山後は 青木鉱泉 に1泊するつもりでいたが,早い時間に下山できたので,白馬まで車をとばし, なじみのペンション「林檎の樹」 に泊まった。

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