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立 山 室 堂

2008年(平成20年) 4月12日(土)-14日(月)

 
コース・タイム
4月12日(土)
 宇都宮(3:20) ⇒ 太田桐生IC(4:30) ⇒ 麻績IC(6:20) ⇒ 扇沢駐車場(7:25)
 扇沢(8:30) ⇒(トロリーバス)⇒ 黒部湖(9:30) ⇒(ケーブルカー)⇒ 黒部平(9:50) ⇒(ロープウェイ)⇒ 大観望(10:20) ⇒(トロリーバス)⇒ 室堂(10:35)
 室堂ターミナル発(10:45) → 昼食(11:20-) → 雷鳥荘着(12:30)
 雷鳥荘発(13:30) → 雷鳥平(13:45) → 新室堂乗越(14:50) → 雷鳥沢ヒュッテ(15:35) → 雷鳥荘(16:25-泊)
4月13日(日)
 雷鳥荘発(9:00) → 室堂ターミナル(10:00) → 一ノ越手前(昼食)(10:30-11:00) → 室堂山荘(12:30) → 雷鳥荘(13:15-泊)
4月14日(月)
 雷鳥荘発(8:20) → 室堂ターミナル(9:15)
 室堂発(9:40) ⇒ 大観望発(10:10) ⇒ 黒部平発(10:30) ⇒ 黒部湖発(11:00) ⇒ 扇沢着(11:15)
 扇沢発(11:45) ⇒ 大町温泉(12:00-13:00) ⇒ 麻績IC(13:40) ⇒ 太田桐生IC(15:40) ⇒ 宇都宮(17:00)

同行者
 BAKUさん,かしら,キレンジャクさん,みどりちゃん,ドラ吉さん,ポチさん, キクさん,妻


 日本山岳ガイド協会 の公認ガイドである「BAKU」さんから, 「立山・剣岳,自然ふれあい集会」 へのお誘いがあった。
 この集会は, 社団法人日本山岳ガイド協会 が環境省の許可を受けて実施するもので,積雪期の 立山・室堂地域 の利用について,自然環境保全,安全管理対策の視点で調査,研究するために, 一般開放前の立山室堂地区 で行うものだ。
 実施期間中は,一般者の立ち入り及び利用の制限されている地域を利用することとな るため, 公認ガイドが同行すること や,環境保全のために必ず 携帯トイレを携行すること などが義務づけられている。
 環境保全には以前から興味もあり,何よりも,一般開放前の室堂地区に入れることが 魅力で,参加することにした。

4月12日(土)
 パーティーは, BAKUさん をリーダーに,全部で9人。 扇沢駐車場 に8時30分集合と言うことなので, 宇都宮 の自宅を3時20分に出発した。 太田桐生IC から北関東道に入り,関越道,上信越道,長野道と乗り継いで 麻績IC から生坂,八坂を通って大町へ,そして 扇沢駐車場 に着いたのは7時25分。一般開放前と言うことで,駐車場の車は少なかった。BAKUさ ん達の車はまだ来ていなかった。
 駐車場には5mほどの 雪の壁 ができていたが,路面は完全に除雪されていた。

 まもなく全員が揃い,ターミナル に移動してメンバーの紹介と, BAKUさん のあいさつがあって,山行がスタートした。


 トロリーバス も貸切状態

 黒部ダム では,160段の階段を登り, 展望台 に行った。


 この9人 が今回のメンバー。
 右から,前列, ポチさん,キレンジャクさん,みどりちゃん 後列, ドラ吉さん,妻,かしら,キクさん,BAKUさん,私   なぜだか,私だけザックを背負っている。


 外階段が 積雪のために通れない ため,同じ階段を下ってダムサイトに出た。分かっていれば,荷物をデポして行ったの に,とんだトレーニングになってしまった。
 トンネルの出口にあった温度計は +2℃ を示していた。風が弱いので,寒くは感じない。


 ダムサイトから上流方向を見ると,正面に 赤牛岳 が見える。湖面はまだ真っ白に凍結していた。水位は下がっている。

 ダムサイトを歩いて 黒部湖駅 に向かう。

 地下の駅で, 地下のケーブルカー に乗る。


 黒部平 でケーブルカーを降りた。 展望台 に出てみると,徐々に霧が晴れていき,見上げる首が痛くなるほどの高さに, 立山の頂 が姿を現した。

 反対方向を見ると, 針ノ木岳,スバリ岳 が聳えている

 立山ロープウエイ は,途中に支柱のないロープウエイで,一気に高度を稼ぐ。

 霧は徐々に晴れ, 室堂 に着いてターミナルの屋上に出たときには日が照っていた。ターミナル前の駐車場では, 除雪が進み舗装面が顔を出していた。



 見晴らしの良いところに出てみると, 立山から真砂岳,別山,剣御前に繋がる稜線 が,衝立のようにそびえ立って見えた。
(写真をクリックすると大きな写真が見られます。)


 スノーシュー を履いて,いよいよ雪の上を歩き出した。私は,はしゃぎたくなる気持ちを必死にこら えて,ゆっくりと前の人に続いた。

 なだらかな丘を越えると,目の下に 「みくりが池温泉」 が見えてくる。まだ,建物の半分は雪に埋まっており,大きな除雪車で必死に掘り出し ているところだった。


 みくりが池温泉の裏手の丘の上で昼食にした。
 ここまでくると, 剱岳 の頂上が 剣御前の稜線 から顔を出してくる。山頂が丸く見えたので, 前剱 と思っていたのだが,帰宅してから「 カシミール 」で調べたところ,間違いなく 剱岳 の頂上だった。 早月尾根 も,一部が見えている。
 
 昼食を食べてから,3日間お世話になる 「雷鳥荘」 に向かった。
 少し進むと,これもまた,眼下に屋根近くまで雪に埋まった 雷鳥荘 が見えてきた。南側だけは3階の窓が雪の上に出るように除雪してあった。


 出入り口は 3階廊下の端にある窓 を利用していた。
 雷鳥荘 にチェックインし,不要な荷物を置いて,再び出発した。目標は 「新室堂乗越」 だ。


 天気は良く,上空に薄い雲はあるのだが,強烈な紫外線が降り注いでくる。 サングラス は絶対にはずせない。  上空を見ると, 太陽が暈を被っている。

 雷鳥荘 から急な斜面を下って, 称名川 を越える。 まだ完全に雪に覆われているが,この雪の下では雪解け水が流れているはずだ。

 雪面にトレースは全くない。好きなところを自由に歩けるのは気持ちが良いが,あま り自由に歩くこともできない。なぜならば,これからここを訪れる人が,私たちの足跡を辿って歩 き, 私たちの歩いた足跡が,残雪期のルートになる のだ。
 徐々に傾斜も急になってきたので,小休止。ここに荷物をデポして目的地の 「新室堂乗越」 向かった。あまりにも良い天気で,登りは暑い。 半袖シャツになった が,風がないので寒くはなかった。

 みんなは,左の尾根を詰めて乗越へ向かった。私はリーダーの許可を得て,一人で 右の斜面 を詰めて登り始めた。こちらの方が傾斜が緩いと判断したのだが,あまり違いはなかっ た。
 真横から見ると 斜面の傾斜 がよく分かる。

 新室堂乗越 は緩やかな尾根だ。もう少し右に尾根を進めば剱岳方向の見晴らしは良くなるのだが, 時間も経っており,今日はここで下ることにした。


 奥大日岳に繋がる稜線 が,たっぷりと雪を被って続いている。


 乗越からの下りは 「尻セード」 。傾斜が急で,かなり怖かったが。楽しみながら下れた。下りは速い。  称名川を渡り,対岸の斜面を登ったところで振り返ると,私たちの歩いてきた足跡が しっかりと見える。

 「雷鳥沢ヒュッテ」 の脇を通り,ハイマツが顔を出した尾根を登っていくと,先頭を歩いていた「かしら」 がハイマツの中に ライチョウ を発見した。

 しばし撮影タイムとし,めずらしい姿をカメラに収めた。


 私も, ライチョウ は幾度か見ているが, 真っ白なライチョウ を見たのは初めてだった。


 夕食前に, 自然保護についての学習会 があった。ガイド協会で自然保護を担当している 講師 から,ライチョウの保護についての話があった。


 ニホンライチョウの生息数は全国で約3000羽,そのうち富山県に 1500羽, 室堂地区に300羽が棲息しているという。この地区は,全国で最もライチョウの密度が高 い場所なのだ。ちなみに,北海道にはこのニホンライチョウはいない。北海道には,別種のエゾラ イチョウがいる。エゾライチョウは冬でも白羽にはならない。
 夕食の前に私が持って行ったワインで乾杯した。  夕食はとても美味しかった。カメラを持って行ったのだが,食べること(飲むこと?) に夢中で,写真を取り忘れてしまった。


4月13日(日)
 雪は降っていないが, ガスは昨日より濃い。 日が昇っても,太陽の姿は見えない。予報通り,天気は下り坂だ。 出入り口の「3階の廊下の窓」

 いよいよ2日目の行動開始。予定では, 一の越 から 室堂山 に行く計画だが,昨日の雪の状態から判断すると,簡単ではないことが分かる。

 とりあえず, ターミナル まで行って,そこで決めることにした。 立山は昨日と変わりなく聳えているが,背景 の青空は今日は無い。

 ターミナルから 室堂山 を眺めたが,もちろんトレースはなく,傾斜もかなりあることが分かった。尾根には雪 庇の張り出しもあり, スノーシュー で登るのは難しいと判断した。
 そこで,先行者も多い 一の越へ向かう ことにした。
 しかし, 一の越 へのルートも斜面のトラバース多く,簡単ではなかった。進んでいくうちに傾斜がきつ くなり, スノーシューだけでは危険 になってきた。天気も悪化し,雪がちらついてきたため,前進をあきらめ,そこで昼食 にした。一の越の手前の緩斜面に腰を下ろし,湯を沸かしてラーメンを食べたり,それぞれ,大自 然を独り占めして満喫した。


 30分ほど居て,下山を開始した。
 往路を戻ることは止め, 谷底を目指して下った。 途中でブルドーザー道に降り, 室堂山荘 を目指した。


 室堂山荘 の前に, 除雪用の大型ブルドーザー が置かれていた。最近の機種は GPS を持っており,雪の下に隠れている道路を確実に捕らえて除雪することができる。アル ペンルートの除雪など,これで随分と楽になったという。

 室堂山荘 の脇を通り, 雷鳥荘 を目指して歩く。


 徐々に天気が悪くなり, 吹雪いてきた。 「ホワイトアウト」 と言うほどではないが,近くの建物もときどき見えなくなる。雪が頬に当たって痛い。


 午後1時過ぎには 雷鳥荘 に帰着した。天気が回復すれば,近くにライチョウ観察にでも出かけることになってい たのだが,吹雪はますます激しくなり,外には出られなかった。
 まず,温泉に入って冷えた身体を温めた。2階の展望浴室で,なにげなく外を見ると, ニワトリ程もある 大きなライチョウ が窓の外を歩いている。
 ライチョウ はゆっくりと男湯の前を通って女湯の方に歩いていった。これを見た「かしら」は, あのライチョウはオスだ。
 そう言えば, 今年は雪が多く,窓の外から女湯が覗けてしまう。 と山荘の人が言っていた。
 外に出られないとなると,部屋の中ですることは決まっている。 大宴会とおしゃべり会 がスタートした。BAKUさんの巧妙な進行で,それぞれとっておきの話を聞くことができ た。
 今日は夕食の写真を撮った。 満足できる味と量だ。  食材の運搬などは,雪があるうちは,ブルドーザーで荷運びができるが,雪が解けて しまったら,人力によるボッカに頼ることになるという。  さっきまで飲んでいたのに,またたくさん飲んでしまった。



4月14日(月)
 吹雪は一晩中続き,朝までに,新雪が20cmほど積もった。  昨日は飲み過ぎたようだったが, 朝食 は美味しく,お代わりをしてしっかりと食べた。


 食後に コーヒー をサービスしてくれた。  美女に囲まれ,楽しいコーヒータイム のBAKUさん。

 いよいよ最終日のスタートだ。風は弱まったが, 雪は依然として降り続いている


 まず, ターミナル を目指して歩き出したが,昨日の足跡は注意深く見ないと分からないくらいに新雪が覆 っている。  BAKUさんが持参した GPS携帯 が威力を発揮した。


 1時間ほどでターミナルに到着

 できれば 「雪の大谷」 を見たかったのだが,現在は 除雪作業中 ということで,入ることはできなかった。  しかたなく,帰途の トロリーバス に乗り込んだ。
 黒部平 で外に出てみたら,雪は上がり,薄日が差しているところも見えた。


 黒部ダム では,まだ小雨が降っていたが,これも,徐々に上がっていった。


 ダム湖 にも日が当たり始めていた。正面の 赤牛岳は見えない。



 トロリーバス  バスでありながら ナンバープレート が無いのはちょっと変な感じだが,専用道だけを走るので,ナンバーは必要ないのだ。

 手にも,心の中にも たくさんの お土産 を持って駐車場に向かう。

 とにかく, 夢のような3日間 だった。誰にも邪魔されずに大自然を満喫することができ,こんな贅沢なことはなかっ た。

 いいところに行きたい気持ちは誰も同じで,そのためにたくさんの 人が一度に押しかけることになる。その結果,オーバーユースになり,自然が破壊されていく。
この問題は難しい問題だ。
 長い時間の中で徐々に変化していくことは自然の成り行きなのだが,数万年も続いて きたことが,僅か数十年で変化してしまうことは,「自然の成り行き」ではない。
 私たちは,先祖から受け継いだ自然を,できるだけ変化させずに子孫に引き継ぐ義務 があると思うのだ。
 単に大自然に感動しただけでなく,また,保護と利用のバランスの問題を考えさせら れてしまった。

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