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黒 檜 岳

2008年(平成20年) 6月1日(日)

 黒檜岳 への登山道は,2万5千分の一地形図には載っていない。そこで,随想舎発行の「 栃木の山140 (宇都宮ハイキングクラブ編)」を参考にした。
 この本に載っている図は,あまり詳細な図ではないが,概ね合っているようである。 ただ, 標準タイムの記載が,実態とずれている ような気がする。 登山口(黒檜岳分岐)から山頂まで100分と記載されているが,よほどの健脚でない限 り,100分で登るのは難しい。
 下図の A点 の手前が,急斜面で崩れているところもあり,不安定で滑りやすいため,注意が必要。 特に下りでは滑落に注意。
 A点 から B点 までの間にシャクナゲの群落が多く見られる。
 B点 からはコメツガなどが増え,シャクナゲは少なくなる。
 「社山分岐」 地点の立木に, 「黒檜山 標高1976M」 というプレートが打ち付けられているが,ここは山頂ではない。山頂は更に5分ほど進 んだところにある。


コース・タイム
 宇都宮(3:45) ⇒ 歌が浜駐車場(車1台デポ)(4:45) ⇒ 赤沼駐車場(5:10) 赤沼(5:30) ⇒低公害バス⇒ 千手が浜(5:55)
 千手が浜(6:00) → 黒檜岳分岐(6:20) → A地点(7:00) → B地点(8:15) → 山頂(9:05-15) → 窪地(10:10) → 1792ピーク(10:55) → 社山(11:45-昼食-12:15) → 阿世潟(13:10) → 歌が浜駐車場(14:10)
 歌が浜駐車場 ⇒ 赤沼駐車場 ⇒ やしおの湯 ⇒ 宇都宮

同行者
 キクさん

 社山 の奥に 黒檜岳(くろびだけ) という山があることはずっと以前から知っていた。 国土地理院の地形図に登山道の記入がない ことなど,一般的な山ではないが, シャクナゲ がきれいに咲くことは知られていた。ところが,最近の登山ブームで登山者が増え,標 識なども整備されたということなので,行ってみることにした。 キクさん に声をかけると,同行すると言う。彼は,以前に所属していたハイキングクラブで登っ たことがある。
 車2台で行き, 黒檜岳 から 社山 へ縦走することにした。 千手が浜 までは, 菖蒲が浜 から歩いてもいいのだが,体力温存のために,赤沼から 低公害バス を利用することにした。 休日運行 の始発は8:00なのだが, 早朝運行 で1本だけ5:30発の便が千手が浜まで行くのでこれに乗ることにした。
 歌が浜駐車場 でキクさんと落合った。中禅寺湖の対岸には 社山 が朝日を受けて輝いている。

 歌ヶ浜駐車場 に,キクさんの車をデポして 赤沼駐車場 に向かった。早朝にもかかわらず 赤沼駐車場 にはかなりの車が停まっていた。駐車場から, 奥白根のピーク が意外なほど近くに見えた。


 赤沼 からバスに乗ったのは私たちを含めて6人。途中の 小田代原 でさらに数人が乗り込んで 千手が浜 へ。乗客は意外と少なかった。 九輪草 が咲き始めるとこんなものではなくなるのだろう。
 6時前に 千手が浜バス停 に着いた。

 浜に出てみると, 男体山 の上に初夏の太陽が輝いていた。陽射しは強いが早朝のため気温が低く,爽やかだ。


 咲き始めたクリンソウ園 を右に見て湖畔を進むと, 千手堂跡 に出る。 千手が浜 の由来となった千手堂の跡で,標柱が立っている。さらに少し行くと, 黒檜岳の登山口 に出る。ここを直進すると,湖畔を通って 阿世潟 に出られるが,我々は右に折れ,緩やかな斜面を登っていく。
 足元に フッキソウ の大群落があった。フッキソウは 富貴草 とかき,名前は草だが,木本の仲間だ。 常に青々として葉を茂らせ,絶え間なく株が増えていく様子を「富」 が増すとみなし,白い真珠のような実を貴金属とみなして「貴」の字をあてた という。

 雪解け後間がないためか,枯れ葉が地面にへばりついていて,足跡がわかりにくい。 木の幹に取り付けられた 赤と黄に塗り分けられたプレート を頼りに登っていく。
 緩斜面を少し登ると標識が現れる。標識に従って左に折れ尾根の側面を登っていく。 いよいよ本格的な登りだ。
 ここから尾根(図のA点 )に出るまでの斜面は,急傾斜で荒れているところもあり,スリップに注意しながら慎 重に進む必要がある。逆コースをとる場合にはここが下りになるので,更に注意が必要になる。
 尾根に出たところ( 図のA点 ) で休憩。ここで素敵な御夫婦に出会った。1000山踏破を目標に掲げ,御夫婦で協 力しながら登られているという。今日も, 黒檜岳 とその先にある シゲト山 を目標にしていた。すでにたくさんの山に登られているらしく,かなりの健脚とお見受 けした。
 いよいよ シャクナゲ の花が増えてきた。葉の形から アズマシャクナゲ であることは間違いないのだが,珍しい 真っ白な花 があった。

 高度が低いほど白い花が多く,高度が上がると鮮やかな色の濃い花が多くなった。こ れには,なにか理由があるのだろうか。


 主尾根に出ると( 図のB点 )シャクナゲは少なくなる。 傾斜も緩く なり,ゆっくりと尾根を詰める。
 しばらく進むと 社山への分岐 に出る。正面の木を見ると, 「黒檜岳 標高1976M」 と書かれたプレートが打ち付けられている。 地形図で見ると, 山頂 はもう少し先に行った所で,ここは山頂ではないはずだ。

 少し先に進んでみると,案の定 山頂標識 があった。


 最近, 個人やクラブなどが自作したと思われる山頂標識 を見ることが多い。あまりに多いと美観を損ねることもあり,考え物だ。北アルプスな どでは標識の取り付けを制限しているところもあるという。 「登頂記念に」 という気持ちも分からなくもないが, 山頂の私物化は許せない。 まして,山頂を示す標識を山頂でもないところに付けるなんて,最低限これだけは止め てもらいたい。
 山頂は見晴らしはないが,ここで休憩を取り, 社山 に向かった。
 ここから社山までのルートは,手元にある 古い昭文社の地図 に点線で示されていた(新しい地図でどうなっているかは未確認)ので,これを参考にし た。
 山頂から分岐に戻り, 標識 に従って右へ折れ,緩やかな斜面を下っていく。

 足跡はわかりにくく, 赤と黄のプレート を頼りに進む。かなり多めにプレートが付けられているので,見つけやすいが,見当た らないときには テープ を探せばいい。
 だだっ広い尾根 で,尾根の中心を探すのが難しいから,ガスなどでマーカーが確認できない場合には, 特に注意が必要になる。
 954ピーク の手前まで来ると 視界が開けてくる。

 ここから 社山 までは,概ね 笹原の尾根歩き だ。多少のアップダウンはあるが,快適な散歩道だ。正面に 半月山 が見える。目指す 社山 はその左。


 笹が枯れたところ では,地面を覆った枯れた笹が滑りやすく,思わぬ苦労をさせられた。


 古い倒木の株 が,芸術的な姿を見せている。
 ここにはかつてこのような巨木が生えていたのだ。明治時代に 足尾銅山から排出された亜硫酸ガス のために枯れてしまい,今は残骸だけが残されている。日本における 公害の原点の姿 がここにある。

 この形の 中禅寺湖 を見るのは初めてだ。対岸の 高山 には,今, BAKUさん 達が登っている。大きな声を出せば届きそうな近さだ。


 奥白根山のドーム も,いつも見るのと形が違う


 袈裟丸山,鋸山など 足尾の山塊 が見える。


 続く笹尾根の向こうに 男体山

 倒木の残骸が累々と連なる光景は異様だが, ダケカンバの幼樹 が育ってきているのが救いだ。


 社山への最後の登りを登ると,頂上の直下に大きな露岩がある。 そこに腰を下ろし, 今日歩いてきたルートを目で辿った。

 正面の 黒檜岳山頂 から左に見える尾根を下り,やや小高くなった所から手前の尾根に降りてくる。この辺 りから視界が開けてきた。その後は,概ね写真に写っている尾根の中央を歩いてきた。背後には 奥白根山 錫ヶ岳 がどっしりと構えている。
 社山の山頂 は多くのハイカーで賑わっていた。山頂では30人ほどが昼食をとっていた。私たちは, 山頂の西の開けたところで昼食にした。次第に雲が広がり始め,ガスが巻いてきた。天気が悪化し ないうちに下ろうと,山頂を出発した。
 かなりのロングコース(カシミールでトレースしたところ,距離は 13.6km ,累積高度は +−1000m )だったが,好天に助けられ,楽しく歩くことができた。

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