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宝 剣 岳

2009年(平成21年) 8月6日(木)-7日(金)


コース・タイム
8月6日(木)
 宇都宮(3:30) ⇒ 太田桐生IC ⇒ 駒ヶ根IC ⇒ 菅の台駐車場(7:50)
  菅の台(8:15) ⇒(シャトルバス)⇒ しらび平駅 ⇒(ロープウエイ)⇒ 千畳敷駅(9:10)
   千畳敷駅(9:15) → 天狗平(10:00-10) → 宝剣岳(10:45-50) → 宝剣山荘(11:15-昼食休憩-12:10) → 駒ヶ岳手前(12:35) → 宝剣山荘(13:00-泊)
8月7日(金)
   宝剣山荘(6:45) → 剣ヶ池(7:30) → 千畳敷駅(7:35)
  千畳敷駅(7:40) ⇒(ロープウエイ)⇒ しらび平駅(7:50-8:00) ⇒(シャトルバス)⇒ 菅の台(8:35)

 菅の台駐車場(8:45) ⇒ こまくさの湯(9:00-10:00) ⇒ 駒ヶ根IC ⇒ 伊那IC ⇒ 権兵衛峠 ⇒ 奈良井宿(10:55-11:20) ⇒ 寝覚ノ床(12:55-13:00) ⇒ 南木曾温泉ホテル木曽路(-泊)

同行者
 妻

 恒例の チェスカ の集まりが,今年は 犬山市 で開催される。昨年は 滋賀の長浜 で開催され,その機会を利用して 白山 に登ることができた。今年は,この機会を利用し,中央アルプスの 宝剣岳・駒ヶ岳 に登ることにした。
 高速道路の 休日割引 が,8月6日から実施されるのを受けて, 8月6日〜7日 で登山を実行することにした。前夜乗り込みも考えたのだが,第1日の日程に余裕があ るので, 当日早朝に宇都宮を発つことにした。

8月6日(木)
 午前4時発の予定でいたのだが,早く起きられたので, 3時30分 に自宅を出発した。北関東道の 太田桐生IC から高速に乗り,関越道,上信越道,長野道,中央道を走り, 駒ヶ根IC で降りて 菅の台駐車場 まで 4時間半弱 で着くことができた。
 まだハイシーズンではないのか, 駐車場 も,バスも特に混雑はなかった。

 バス停でバスを待っていると, TVの撮影 をやっていた。 浅丘雪路,松原千明,モト冬樹 の3人で,私たちの乗った次のバスで 千畳敷 まで行くらしい。

 菅の台 から しらび平 まで約40分。 しらび平 からロープウエイに乗り換え, 千畳敷駅 まで約8分。待ち時間を含め 約1時間で千畳敷駅 まで到着。
 早速外に出てみると, 周囲は 濃いガス に覆われている。予定では, 宝剣岳 を通って 宝剣山荘 へ行く計画なのだが,天候が思わしくないので,どうしようか考えた。ガスは濃いが, 風が殆どないので,岩場でも大きな危険はないと判断して,予定通り 宝剣岳 に向かうことにした。歩き始めてすぐに,ガスの水滴が大きくなってきたので,雨衣の 上下を着けた。暑いが我慢して歩き出した。


 足元に キバナノコマノツメ が咲いていた。

 イワカガミ

 ナナカマド

 コバイケイソウ が水の流れに沿って咲いている。


 クロユリ


 登山道はじきに 開けた岩混じりの斜面 になる。大きな岩の間に チングルマ が群落を作っている。

 ヨツバシオガマ もきれいだ。

 高山にしか生育しない イワツメクサ が咲いていた。ここの高度は 2700m を越えている。

 登山者が多いのだろう, 登山道 はしっかりと整備されている。

 アオノツガザクラ


 稜線の分岐点, 極楽平 に着いた。 ここで雨衣を脱いだ。

 タカネツメクサ

 花びらの内側に白い毛が多いので チシマキキョウ

 ヒメウスユキソウ(コマウスヨキソウ)  中央アルプス 駒ヶ岳付近 にだけ分布する 希少種 で,環境省の 準絶滅危惧種 に指定されている。とても小さい。


 オンタデ


 三ノ沢岳 への 分岐  ここから岩場が始まる。


 山頂へは 稜線 を辿っていく。

 できるだけ クサリを使わずに岩角のホールドを探して 進む。

 岩から身体を離し,しっかりと 足下を見ること が出来ている。

 バランス も良い。

 ここはかなりの 高度感 があるのだが,ビビッテはいない。


 クサリは使わずに, 岩角 を掴んで降りている。


 山頂での 記念写真  さすがに,この岩の上には登れなかった。


 山頂を過ぎると道は下りになり,間もなく 宝剣山荘 が見えてくる。奥の赤い屋根は, 天狗荘


 小屋に入り受付を済ませて昼食にした。
 食事をしていると, 大粒の雨が降ってきた。  天気が良くなれば 駒ヶ岳 まで行くつもりなので,とりあえず天気の回復するのを待つことにした。
 雨は,ひとしきり降ると 小降りになった ので,とにかく出かけることにした。
 隣の 天狗荘

 中岳 のピークを過ぎ,急な斜面を下り始めると,ガスの切れ間から 頂上山荘 が見えた。


 頂上山荘 の前まで行ったところで,雨が強くなったので, 引き返す ことにした。
 私たちは,ピークハントそのものには全くこだわっていない ので,このまま頂上まで行ったとしても,”楽しくない”から,引き返すことにした。
 私としても,全てのピークハントが全く意義が無いと思うわけでもない。専門家が人 類未到のピークに挑戦することなどは,尊い事だと思っている。しかし,私たちが登ろうとしてい る 観光地化しているピーク の場合,ピークを踏んだか否かはそれほど重要とは思えない。 日本百名山完登 を目指す場合などのように, ピークハントそのものに意義づけ をしている場合には,山頂で証拠写真を撮ってくることは重要なことなのだろうが。
 山荘に戻っても,雨は時々小降りになりながらも 降り続いた
 ガスが途切れると,山荘の窓から, 千畳乗越 の向こうに 和合山 まで見渡すことができた


 夕食は 手作りのコロッケ が美味しかった。テーブルで隣り合った,新潟から来たという若い2人連れと会話をし ながら楽しいひとときを過ごした。

 山荘の部屋は6畳間に 3組の夫婦6人 が入った。部屋が狭いのに,布団は 一般サイズ のもので,隣と重ねたり頭を折り曲げたりで,敷くだけで大変だった。布団サイズを変 えるだけで,ずっと快適になるのだが,その気は無いようだった。 やはり北アルプスの山小屋と比較してしまうのだが, 利用者が多 い割には,設備などは良くはない。
乾燥室 もなく,雨衣などは,板敷きで外履き使用の 食堂 に綱を張って干すのだが,これも, 夕食の準備 が始まると撤去しなければならない。この夜の 宿泊者は約80人  スタッフは8人 だった。どういうわけか,この夜はとても暑く,暑さと戦いながらうとうとして朝を迎 えた。朝まで雨は降っていた。

8月7日(金)
 天気でも良ければ, 駒ヶ岳 に登ってから下山しようと思っていたのだが,雨が止む気配はなく朝を迎えた。 朝食 は山小屋としては標準的なものだった。

 朝食を終えた宿泊者たちは 二通り に分かれた。まず, 宝剣を越えて空木岳方面に向かう人 が,雨の中出かけていった。 残ったのは,そのままロープウエイで下る人 たちだ。私たちは後者のグループだ。だが,前者のグループが圧倒的に多い。
 この雨の中, 宝剣の岩場 を歩くのはたやすいことではない。特に,クサリは濡れると滑るので,できるだけクサ リを使わない方が良いのだが。 初心者ほどクサリに頼ることになるので,危険度が増す。宝剣岳に向 かった人の中には,見るからに初心者と思われる中高年の登山者も少なくなく,他人事ながら心配 だった。
 危険と成就感は背中合わせのもの なので,危険であればあるほど, クリアしたときの成就感 は高い。これが 登山の醍醐味 の一つでもあるのだが,それは,危険を乗り越えるための 万全の方策 をとった上で初めて言えることだ。しかし,多くの場合は,何の対策もとらなくても, 結果的にはクリアできるのだが,天候の急変やチョットした躓きがもとで大事故にならないとも限 らない。 雨の中,彼らが先に進む理由は何なのだろうか。 雨の中でも,歩くこと自体が楽しいのならばそれはそれで納得するが, スケジュールを優先 させるためだったり,百名山完登のためだったり, ピークハントにこだわったり した結果だったとしたら,それはかなり危険なことだと思うのだが。
 ロープウエイの運行開始が 8:00 だと言う( 実際には7時頃から動いていた )ので,それに間に合うように山荘を出た。  千畳乗越 から少しの間は, 急な斜面 をジグザグに下っていく。


 傾斜が緩くなると,高山植物が増えてくる。  シナノキンバイ の群落が斜面を埋めていた。

 千畳敷まで降りてくると ショウジョウバカマ が咲いていた。ここはまだ雪が解けて間がないのだ


 カールの底には が残っていた。

 ここでは, クロユリ がたくさん咲いていた。目立たない色だが,これだけ多いとさすがに目に付く。


 遊歩道の最低部に 剣ヶ池 と呼ばれる小さな池がある。その縁に,大きな看板がある。



 ロープウエイで来て,この遊歩道を一周するだけでも,たくさんの高山植物に会うこ とができる。悪天候などで山に登れないときには,これだけでも良い。
 今回の山登りは,下山以降の日程が決まっていたので,もし天気が悪ければ中止する しかなかった。初日の天気はまあまあで, 宝剣岳 にも登ることができて大満足だった。 駒ヶ岳 も頂上直下まで行くことができ,山の雰囲気を感じ取ることができた。

 私が 木曽駒ヶ岳 に興味を持ったのは, 新田次郎 「聖職の碑」 を読んでからだ。 聖職の碑は1978年に東宝で映画化されている。 この映画は,私は見ることはなかったが,今,その脚本が手元にある。撮影はあの 劔岳−点の記− を撮った 木村大作 キャストは, 鶴田浩二,三浦友和,北大路欣也 など。 大正2年8月末, 信州上伊那で 西駒ヶ岳修学旅行登山 の途上,台風の襲来による大荒れの天候のため, 引率した校長始め高等科2年の生徒など11人が遭難死した。 その 遭難の碑 が,西駒山荘から駒ヶ岳に向かって少し登ったところに,現在も立っている。そこまで 行きたかったのだが,今回はできなかった。次の機会を待ちたい。

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