閉じる
社  山

2010年(平成22年) 3月30日(火)


コース・タイム
 宇都宮(4:35) ⇒ 歌が浜駐車場(5:17-朝食)
  駐車場(6:10) → 阿世潟(7:25-40) → 稜線(8:25) → 山頂(10:45-昼食-11:45) → 稜線(12:55) → 阿世潟(13:15) → 駐車場(14:50)
 歌が浜駐車場(15:00) ⇒ 宇都宮(16:00)

同行者
 単独

 3月30日,仕事が休みだったので,天気予報に誘われ 社山 に行ってきた。  社山 は,四季それぞれ何時行っても素晴らしい山だが,特に,残雪期の社山が大好きだ。 アプローチが長い こともあり,なかなか簡単には登らせてくれないところも,好きな理由の一つである。 今回も登りに 4時間半 (休憩を含んで)ほどかかった。
 もう雪が積もることはないだろうと, 車のタイヤをノーマルに替えてしまっていた ので,前夜,季節外れの雪が降ったときには,いろは坂を無事に登れるかどうか心配し た。しかし アウトバック シンメトリカルAWD は,不安を感じさせることもなく,うっすらと雪の残る斜面を確実に登ってくれた。
 車の外気温計によれば, 宇都宮で0℃,日光で−4℃,いろは坂で−8℃ ,歌が浜駐車場で−7℃ だった。 平日と言うこともあって, 歌が浜駐車場 にはほかに停まっている車は無い。

 社山 に朝日が当たり,輝きだした。

 中禅寺湖の対岸には 奥白根山 があるのだが,今はまだ靄の中だ。


 身支度をして歩き始めたのは 6時10分。 気温は 氷点下8℃  風は徐々に弱まるのだが,この時はまだ強い風が吹いていたので,サングラスの代わ りに スキーゴーグル をつけてスタートした。スノーシューは担いでいったが,出番はなかった。
 駐車場の端から振り返ると, 男体山 にも陽が当たって輝いていた。

 ゲート前の駐車スペースに1台車が停まっており,そこから出発した1人の足跡が先 行していた。しかし,この足跡は 狸窪 から 半月峠の方 に向かって登っていき,その先は新しい足跡は無くなった。この日は,下山してくるま で,誰にも会わず,社山は 完全に独占状態 だった。
 いつもはつるつるに凍結しているこの道も,新雪が表面を覆い,滑らずに歩くことが できた。


 「イタリア大使館別荘記念館」 は,冬期閉鎖中でひっそりとしていた。

 湖岸から見る 社山 は一回り大きくなった。

 風が強く, 湖面 は波立っていた。

 湖畔沿いの道を進むと, 通行注意の表示 があった。そう言えば,もうずいぶん前のことになるが,冬期に中禅寺湖を1周しよう として歩き出した観光客が,途中で日没になってしまい凍死したという事故があった。


 狸窪 (ムジナクボ) には釣り客用の民宿 があるが,もちろんこの時期は営業はしていない。

 狸窪 の民宿の利用者はここまで車で入ることができるが,民宿の先に ゲート があり, この先の林道には一般車は入れない。


 半月峠への分岐  先行していた足跡はここから峠の方へ登っていった。

 朝日が差し込んできた。 不思議なもので,とたんに暖かさを感じる。


 足跡 はたくさんあるのだが,どれも古いものだ。うっすらと雪を被っている


 阿世潟 から社山の山頂へ行くには,阿世潟峠を通り,尾根伝いに進むのが一般的だが,積雪期 には,北側の 阿世潟沢を詰めて 登ることもできる。いつかそこを歩く日のために,その入り口を確認しようとして湖畔 を少し先に進んでみたが,雪も深く,諦めて阿世潟に戻った。


 アイゼン を着け, 阿世潟峠 を目指してスタートした。  峠までの道は,吹きだまりを除き, 積雪30cm程度 で,壺足で 20cm ほど潜った。 足跡の全くないルート を歩くのは快感。


 阿世潟峠への夏道は,横倒しになった太い倒木の下をくぐったところから左に折れ, 橋を渡って峠に向かってジグザグに登っていく。 大きな倒木 が目印だったが,朽ちて危険になったためか切られて片付けられていた。



 今日は,橋を渡ったところから 尾根 に取り付き,ピークまで一直線に登った。このルートは, 2006年2月にヤッホー宇都宮の仲間と上ったルートだ。 その時はノーアイゼンで登ったため,上部の急傾斜で苦労したので,今日は安全のため にアイゼンを着けて登った。


 阿世潟 から稜線の小ピークまで45分でかかった。
 南方には 富士山 がかすかに見えた。写真には写らないだろうと思ったがシャッターを切った。予想通り の写真だったが, 画像処理ソフトで,コントラストを上げてみた。かろうじて確認できる。

 ロボット雨量計のあるピーク の向こうに,山頂らしいものが見える。しかし,見えているのは山頂ではない。本当の 山頂は更にその奥で,なかなか見えない。


 私が勝手に名前をつけた 「社山キレット」  南側の崩壊が激しく,登山道がだんだん細くなり後退していく。雪のあるときの方が 歩きやすい。

 山頂 が近づくと傾斜は緩くなるが,雪は深くなる。

 高度が上がったので, 奥白根山のドーム がよく見えるようになった。それにしても今日は天気がいい。奥白根山がこんなにスッ キリ見えることは少ない。

 山頂 らしきところが見えたが,ここもまだ山頂ではない。この辺りは見晴らしも良く, 春夏秋冬いつ来ても心が和むところ だ。

 足尾 側の斜面から, ピーッ という鋭い鳴き声が聞こえた。4〜5頭ほどの シカの群れ が3群ほど斜面を移動していた。 望遠レンズで覗くと, シカ もこちらを見ている。かなり離れてはいるが,彼らは確実に私のことを確認している。 野生の視力は凄い。

 ほどなく 山頂 に着いた。自分としてはかなり真剣に歩いたつもりだったが, 休憩を含めて4時間35分 かかった。


 それにしても良い天気だ。朝のうち吹いていた風も殆ど止み,暖かな陽射しが降り注 いでいる。この陽射しは明らかに 春の陽射し だ。Tシャツの上に長袖シャツ1枚でも寒くなかった。
 腰を下ろし,バーナーで湯を沸かし即席麺を作って食べた。時間にも余裕があったの で,1時間ほどマッタリして下山を始めた。
 山頂から少し先に行くと, 西方の見晴らしの良い場所 がある。そこまで行って, 黒檜山に連なる稜線 を眺めた。このルートは 2008年6月 に歩いたことがあるが,とても素晴らしいところだ。私には積雪期には無理だが,時期 を選んでまた歩きたい。


 今日は 男体山 もスッキリと見える。左奥は 太郎山  さらにその左は 山王帽子山 

 下山方向の正面に, 中禅寺湖南岸の山々 が連なって見える。

 社山キレット の向こうに ロボット雨量計ピーク


 阿世潟峠の一つ手前の鞍部  今日はここから この谷 を下ることにした。このルートは,2006年2月に ヤッホー宇都宮 の仲間と降ったことがある。雪も適度に柔らかになっており,アイゼンのかかとを踏み 込むことで快適に下れた。


 橋 のところで夏道に合流する。 朝, 私が付けた足跡 だけが橋を渡って登っていた。やはり,今日の登山者は私だけだった。



 下りは早い。稜線から20分で 阿世潟 まで降りてきた。 ここから歌が浜の駐車場までが長くだるい道のりだ。


 歩いていると, 右足の付け根 が痛くなってきた。腿を引き上げる度に痛みが出る。少し休むと痛みが和らぐが,歩き 出すとまた痛んでくる。 平地歩きは,山道とは違う足の運び方をするので,山道とは違うとこ ろに負担がかかる。  急ぐ必要もないから,ゆっくりと休み休み歩いた。
 中禅寺湖の水が極度に透き通っている。この透明度が 神秘的な深み を見せていた。

 狸窪のゲートの脇に マンサク が咲いていた。朝,通ったときには気づかなかった。 ゆっくりのんびり歩くのも悪いものじゃない。

 駐車場に戻ると,男体山の右脇に 真っ白な山が見えていた。 女峰山 だ。いままで,こんな風に見えるとは気づかなかった。

 今日は一日中 奥白根山 が見守ってくれていた。


 振り返って 社山 を眺めた。午後に雲の出ることが多い奥日光で,社山がこの時間までこんなにはっきり と見えるのは珍しい。


 ここ数年,この時期には残雪の山に登っている。昨年は単独で 谷川岳,一昨年は妻と西穂独標,2006年には北横岳に行っている。
 今年は22日に 谷川岳 に行ったのだが,体調不良などから 熊穴沢避難小屋 までで下山してしまった。消化不良のようなもやもやしたものが胸の中にあり,スッキ リしない。そこで,雪の中を思いっきり歩きたいと思い,始めは 前白根山 を計画した。
 前白根山は湯元スキー場から登り 5時間 ほどかかる。前白根山に登るかどうかは,車を日光に向けて走らせていながらも 迷っていた。 それは, 急に降った雪 の影響だ。新雪がどのくらい積もったのか分からなかったが,積雪量が多ければ, 山頂 どころか 天狗平 までも行けないかも知れない。積雪期のルート経験も,2005年の1回だけだから, 先行者のトレースが消えてしまえば, ルートファインディング にも不安がある。
 色々考えて, 行き先を社山に変更して 中禅寺湖の鳥居前の交差点を左に曲がった。地図は,念のために前白根山の他に,社山 と高山,半月山を持ってきていた。もしかしたら,この地図をザックに詰めた時点で, 前白根山 は諦めていたのかも知れない。
 今日は,足の痛みなどを考えると, 社山 にして正解だった。またまた社山が好きになった。

 ページトップへ