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白 馬 岳

2010年(平成22年) 8月22日(日)-24日(火)


コース・タイム
8月22日(日)
 宇都宮(5:00) ⇒ 栂池高原駐車場(9:10)
  駐車場(8:30) → 栂池高原駅(9:40) ⇒(ゴンドラリフト) ⇒ 栂の森駅(10:00)→ 栂大門駅(10:10) ⇒(ロープウエイ)⇒ 自然園駅(10:16)
  登山口(10:40) → 天狗原(12:40-昼食) → 乗鞍岳(14:15-20) → 白馬大池山荘(15:00-泊)
8月23日(月)
  大池山荘(6:45) → 小蓮華山(9:30-50) → 三国境(10:30-45) → 白馬岳(12:00-20) → 白馬山荘(12:45-昼食・泊)
8月24日(火)
  白馬山荘(6:15) → 白馬岳(6:40-50) → 三国境(7:25-35) → 小蓮華山(8:30-35) → 白馬大池(10:00-10) → 乗鞍岳(11:05-10) → 天狗原(12:10) → 栂池山荘(13:20-昼食)
 自然園駅(14:00) ⇒ 栂大門駅 → 栂の森駅 ⇒ 栂池高原駅(14:40) → 駐車場 → 栂の湯(入浴14:40-15:30) → 駐車場
 栂池高原駐車場(15:30) ⇒ 宇都宮(20:00)

同行者
 キクさん,Tさん,妻

 今年の夏山は,メインと考えていた 飯豊山 が中止となり, 月山 には予定通り行けたのだが,何となく物足りなさを感じていた。 キクさん 「もう一個所くらい行きたいね」 と相談がまとまり, 白馬岳 に行くことになった。 白馬岳 は,前回の 2007年 後半大荒れの天気 になり,景色など何も見えなかったので,リベンジの意味もあった。キクさんと私は,そ の前にそれぞれで行ったとき,美しい景色を堪能しているのだが,前回同行した妻は,山頂からの美 しい眺めを経験していない。そこで今回は, 妻とキクさん ,それに 幾度か一緒に歩いているT子さん にも声をかけ,4人のパーティーとなった。この時期は, 大雪渓 は雪解けが進み,歩きにくいだけでなく, 危険も増している ので,大雪渓は通らず, 栂池から白馬大池を通ってのピストン とした。
 第1日 は,朝に宇都宮を車で発って栂池から白馬大池まで。大池山荘に泊まり, 翌日 ,小蓮華山を通って白馬岳へ。この日は白馬山荘泊まりで, 次の日 に,大池経由で一気に栂池まで下り,帰宅することとした。


8月22日(日)

 宇都宮を5時に発って, 栂池高原 の駐車場に9時10分頃に着いた。日曜日なので,駐車場や,リフトの混雑を覚悟してい たのだが,さすがに8月も後半となるとひどい混雑にはならない。 リフト駅前の駐車場 にも空きがあった。


 ゴンドラリフト は6人乗り。待ち時間は殆ど無しで乗ることができた。 谷間からガスが湧いてきて,時々陽射しを遮った。

 リフトを降り, ロープウエイ に乗り換える。10分間隔での運行と言うことで,ここでも待ち時間は殆どなし。

 自然園駅 でロープウエイを降り,登山口のある 栂池自然園 へ向かう。 ヤナギラン が咲いていた。

 栂池自然園 の入口には, 栂池ヒュッテ,村営栂池山荘,ビジターセンター ,そして トイレ がある。ちなみに,栂池自然園に入るには, 入園料 大人300円が必要。自然園のような ところで,入園料(入山料)を取るのはめずらしい。
 村営栂池山荘

 ビジターセンター

 ビジターセンターとトイレの間が 登山道入口   登山カードをビジターセンターの受付に提出していよいよ出発。

 ツルニンジン は別名 バアソブ (お婆さんのそばかす)

 エンレイソウの実 はもう黒くなっていた。

 ベニバナイチゴ(と思う)の実 は,なぜか黒っぽい。

 ミヤマアキノキリンソウ は,今が盛り。

 天狗原の手前に 水場 がある。冷たくて美味しい水だ。

 リンドウ

 ハクサンコザクラ も咲き残っていた。

 高度が上がるにしたがって, チングルマ を付けているものが出てきた。

 天狗原 の休憩所から見上げる 乗鞍岳 にはガスがかかっていた。

 開花が早かった チングルマ 綿毛 になっていた。

 日射 がないと花を開かない タテヤマリンドウ が,花を開き始めた。

 イワオトギリ がきれいに咲いていた。

 天狗原 から先は,岩のゴロゴロした 急斜面の登り になる。

 ハクサンフウロ

 モミジカラマツ

 小さな雪渓の向こうに 乗鞍岳の頂上 が見える。

 このコースでは, 雪渓を横断する直前の登りが最も急だ。 両手を使って登っていく


 雪渓 はずいぶんと小さくなっていた。念のため軽アイゼンを持ってきたのだが,その必要はな かった。

 アザミ の同定は私の苦手。これは オニアザミ か。


 乗鞍岳の三角点 は,登山道から離れたところにある。付近は, ライチョウの保護のために立ち入りが禁止されて おり,近づけない。望遠レンズで捉えた。

 乗鞍岳の山頂標識は, ケルン の近くにある。

 ケルンを過ぎて少し進むと 白馬大池 が見えてくる。あらためてその大きさに驚く。

 白馬大池 の対岸に 大池山荘 が見えた。

 大池山荘へは, 大池を4分の1周ほど しなければならない。大池の水は,驚くほどに透き通っていてきれいだ。

 大池山荘は大雪に耐えるためか平屋づくり だ。内部で2段ベッドのような作りになっている。

 ヘリコプター が荷物を運んできた。 テン場 の真ん中に荷下ろしをする。強烈な風で,砂埃が舞い上がる。写真を撮ろうと近くに待機 していたのだが,何枚かのシャッターを切り,あわてて小屋の中に逃げ込んだ。

 巻き起こす風でテントが飛ばないようにスタッフが必死に押さえてい た。

 夕食には間があるので,付近の散策に出た。
 チングルマの群落

 この群落は, 綿毛 になっていた。

 テン場と小蓮華山  前回私たちがテントを張った場所と同じ場所にテントを張っていた,2人組の若い女性 に声をかけた。大阪と奈良から来たという明るい元気いっぱいの「山ガール」で,うさんくさい年寄 りの話し相手になってくれた。


 夕食は カツカレー カップの日本酒を飲みながら,楽しく頂いた。御飯が固くて,あごが疲れた。

 夜になってもガスが出ず,きれいな星空が見られた。ただ,満月間近の月が明るすぎて 天の川は確認できなかった。 小蓮華山に架かるサソリ座 を撮ることができた。



8月23日(月)

 今日は 白馬山荘までの行程 なので,朝はゆっくりと起きた。 大池山荘 は窪地にあるので,日が差すのは遅いが,遠くの 小蓮華山 から陽が当たり始める。


 朝食 も,豪華とは言えないが,十分なボリュームで,しっかりと食べた。

 白馬大池山荘 を出発し, 白馬岳 に向かった。


 山荘から少し登ると 西方向の展望 が得られるようになり, 雪倉岳から朝日岳に至る稜線が見渡せる。(写真をクリックする と,大きな写真が見られます。)

 朝日岳の左の稜線 に山小屋らしいものが見えた。望遠レンズで捕らえると,建物が二つ写った。 朝日小屋と管理センター だ。

 さらに少し登ると,大池の向こうに, 妙高連山 がシルエットで浮かんできた。写真では確認できない。


 雷鳥坂を登り切って 船越ノ頭 に出ると,南方の展望が開ける。南西の 白馬岳と杓子岳の鞍部 劔岳 が見えた。

 杓子岳 の後ろに 鑓ヶ岳, 天狗の頭 と続き,少し離れて, 唐松岳,五龍岳,鹿島槍ヶ岳 と, 後立山連峰 が見渡せた。

 大雪渓 も見渡せるた。雪渓もずいぶんと小さくなり,安全のため,途中から上は 左岸の岩の上を歩くよう にベンガラのラインが引かれている。

 稜線に登山道が見える。ダラダラと登ったピークが 小蓮華山の頂上 だ。

 展望の良い稜線歩きは,まさに 「天上の散歩道」 だ。登りの苦しさも忘れさせてくれる。

 ウメバチソウ


 タカネナデシコ 

 タカネヒゴダイ

 ヒナコゴメグサ


 イブキジャコウソウ

 ライチョウ の親子が姿を現した。 ヒナは1羽だけ だった。たぶん数羽のヒナが孵ったのだろうが,高山で生きるのは厳しい。このヒナもこ の冬を越せる保障はない。

 親鳥がヒナの行動をじっと見守っている姿が印象的だった。


 イワギキョウ


 タカネヤハズハハコ


 ミヤマコウゾリナ

 小蓮華山の山頂 ここは山頂の崩壊が激しく,山頂に立ててあった 宝剣 も,しばらく倒れたままになっていた。 宝剣 が安全な場所に立て直されていた。大雪渓の谷からガスが巻いてきた。

 白馬岳の岩は,白いものが多いが, 赤い岩と黒い岩,白い岩がベルト状に並んでいる ところがあった。

 この時期,白馬岳で最も目立つ花は トウヤクリンドウ だ。涼しげな白色が暑さを和らげてくれる。

 足元に, 石を円形に積んだもの があった。良く見ると,その中央に一株の コマクサ があった。踏まれないようにと誰かが積んだのだ。


 三国境 は, 越後,越中,信濃の国境 で,現在も 新潟,富山,長野の県境 だ。ここから,雪倉,朝日岳への縦走ルートが別れる。 そのまま栂海新道を進んで日本海まで達してみたいという夢は,まだ持 っている。

 ミヤマダイモンジソウ は字を書くのが下手のようで,なかなかきれいな大の字にはならないものが多い。


 白馬岳 には,固有種の シロウマタンポポ があるのだが, これが シロウマタンポポ かどうかは分からない。 セイヨウタンポポではないことだけは確実だ

 雪倉岳 に向かう稜線の西側に 長池 という小さな池がある。ここには遅くまで残雪が残っている。

 白馬岳の山頂 が見えてきた。

 山頂での記念撮影 。後方には, 新田次郎の小説「強力伝」に出てくる方位盤 が見える。

 眼下には, 白馬山荘  そしてその後方に 村営頂上宿舎 が見える。谷からガスが湧き上がり,先に連なる 後立山連峰 は見ることができない。明日朝に期待しよう。

 山頂から少しくだった崖の上に 松沢貞逸顕彰碑 が建っている。 松沢氏 は, 白馬山荘の前身となる山小屋 をここに建てた人で, 現在の白馬山荘のオーナー松沢貞一氏 は,その孫にあたる。

 白馬山荘 に着いて,まず,レストラン スカイプラザ白馬 で昼食を食べた。今回の山行では,荷物を軽くするために,昼食は持たず,小屋のレスト ランを利用することにした。値段はかなり高いが,山小屋で弁当を頼んでも同じくらいかかるのだか ら,ものは考えようだ

 昼食後にチェックインし,部屋に荷物を置き,軽装で散策に出た。
 杓子岳 が顔を出した。 鑓ヶ岳 にはまだガスが掛かっている。

 縦走路から, 村営頂上宿舎のテント場 を見下ろした。時間が早いせいか,張られているテントの数はまだ少ない。

 丸山 の山頂には展望所が作られている。ここは, 劔岳を眺める絶好ポイント なのだそうだ。しかしこの時は,劔岳の見えるはずの方向はガスに閉ざされており,何も 見えなかった。振り返ると, 白馬岳のきれいな姿 が視野いっぱいに広がっていた。

 いよいよ,冷えたビールが待っている 白馬山荘 へ戻ることにした。少し歩くと突然, 右腰から右膝の内側にかけて吊るような痛みを感じた。 初めは強い痛みでは無かったが,徐々に痛みが強まり,ついに立ち止まってしまった。山 荘までの僅かな距離だが, 痛みが我慢できない。 筋肉痛や関節痛ではない,神経痛独特の痛みだ。

 休み休み,テラスのベンチまでたどり着いた。動かなければ痛みはない。早速ビールで 乾杯し,お互いの健闘を讃え,好天に感謝した。
 夕食 は5時から。 カツ も,ボリュームがあり美味しかった。今日のカップ酒は 白馬錦 ちなみに,昨夜の酒は 大雪渓  やはり,明日のことが気がかりで,お酒も進まない。


 早々と部屋に引き上げ,横になった。やがて,みんなは日没を見に部屋から出て行った が,私は 階段の上り下りが辛く, そんな気にはなれず,部屋の中にいた。
 困ったことになった。 このまま痛みが治まらなければ,明日は悲惨なことになる。いっそのこと,骨折でもあれ ば,救助を依頼することにも納得するが,全く歩けないわけではないから,そこまでは踏み切れない。 そんなことを考えながら,眠りに就いた。


8月24日(水)

 部屋は北側。窓からは 白馬岳の山頂方向が見渡せる。 朝日の昇る方向が見えるのだが,太陽が山腹から顔を出すのは,日の出の時刻よりずっと 後になる。
 朝食 も5時から。頑張ってしっかりと食べた。部屋から食堂への往復で痛みはなかった。まだ 分からないが,少し安心した。


 食堂の窓から 劔岳 が見えた。 劔岳と立山の頂が赤く染まって いる。食事を中断して写真を撮った。


 急いで食事を終え,改めて写真を撮った。 杓子岳 の斜面の向こうに 穂高,槍  その右前に 針ノ木 ,針ノ木の後ろに 野口五郎岳
 (写真をクリックすると大きな写真が見られます。)

 予定通り 栂池を目指して出発した。

 歩き始め と言うこともあって, 山荘から山頂まで の登りが,思ったよりきつい。思いっきりペースを落として歩いた。 右足の痛み は出ていない。 陽射し は,早朝なのに相変わらず強いが,空気が爽やかなので,歩いていて気分が良い。至福の 時間だった。

 山頂からのパノラマ  山名は 「カシミール」 で調べた。  (写真をクリックすると山名入りの大きな写真が見られます。)

 白馬山荘の後ろに劔岳  昨日は見ることができなかった光景だ。

 小さくなった 白馬大雪渓 がずっと下まで見渡せる。白馬尻はもとより,猿倉の駐車場に泊まっている車までよく見 える。
    (写真をクリックすると大きな写真が見られます。)

 名残は尽きなかったが,先が長いので山頂を後にした。
 写真 のように,稜線が二重になる地形を 複山稜 とか 二重山稜 と言うが,その原因は一様ではない。この複山稜は,山稜が割れてできたように思えるの だが,専門家ではないので,断定はできない。

 ミヤマアズマギク   アズマキク の高山形

 ミヤマクワガタ  昆虫にも ミヤマクワガタ という名前のものがいるが,これは クワガタソウ の仲間のミヤマクワガタ。長く突き出た2本の雄しべが, 兜に付けた鍬形 を連想するという。

 名残を惜しんで 白馬岳を振り返る。

 昨日と同じに ガスがわき上がってきた。 この景色ももうじき見納めとなる。名残を惜しんで心のフィルムに焼き付ける。

 縦走路が続いているが,ガスがわき上がり, 時折陽射しを遮り始めた。

 大池山荘 が見えてきた。大池山荘は,かなり遠くからも見ることができるのだが,なかなか近づか ない。

 大池山荘 で休憩し,今日最後の登りである, 乗鞍岳 へ向かう。
 35分で 山頂のケルン に到着した。これで一安心。あとは下るだけだ。


 雪渓の上 は空気が冷やされるためか,ガスが架かることが多い。


 白く見えるが,これは キバナシャクナゲ

 雪渓の直ぐ下では,雪が融けて間もないためか,たくさんの花が咲いていた。
 これは アオノツガザクラ

 天狗平 を経て,予定より少し遅れたが,13時20分無事 村営栂池山荘 に到着した。ここで軽く食事をして,ロープウエイに乗った。
 リフトに乗り継いで, 栂池高原駅 到着14時40分。駅のすぐ前にある 「栂ノ湯」 で汗を流し,帰途に就いた。
 目立った渋滞もなく,20時には 宇都宮 に到着した。 
 第一日目の登り初め,妻の体調がすぐれず,心配した。しかし,2日目以降は,徐々に 回復していき,全コースを歩くことができた。
 私の,予想外の神経痛も出て,体調的にはぎりぎりの山行だった。同行者には心配をか けてしまった。
 それにしても,好天に恵まれ,前回見られなかった景色を十分に堪能することができた。 白馬岳はほんとうに素晴らしい山だ。

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