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庵  滝

2010年(平成22年)11月6日(土)

今回はルートを示しません。その理由は本文をご覧下さい。

コース・タイム
 宇都宮(6:00) ⇒ 赤沼駐車場(6:50)  赤沼(7:00) ⇒低公害バス⇒ 小田代(7:15)
  小田代原(7:20) → 庵滝(9:20-55) → 小田代原(10:55) → 赤沼駐車場(11:40)
 赤沼駐車場(12:00) ⇒ 宇都宮(13:20)

同行者
 単独

 奥日光には魅力的な滝がたくさんある。 華厳の滝 竜頭の滝 ほど有名でなくても,また,それ故に惹きつけられる滝がある。 外山から前白根山,白桧山,錫ヶ岳,宿堂坊山,三俣山 と連なる,栃木県と群馬県の県境の尾根に源を発する沢にはたくさんの滝が懸かっている。 地形図に表記されているものだけでも, 緑滝,庵滝,美弥古滝,赤岩滝,カクレ滝 などがある。 昨年11月7日 赤岩滝とカクレ滝 を訪れて,その素晴らしさに驚き,すっかり虜になってしまった。
 先に挙げた5つの滝は, 公的には登山道はない。 しかし, 赤岩滝 は途中に標識や赤ペンキがあり,比較的行きやすい。 カクレ滝 も途中に1本だけ標識があった。これらの滝に行くためには,いずれも何カ所かの 徒渉個所 があり,水量の多い時には 沢歩き用の装備 が必要になる。私が昨年の11月に赤岩滝・カクレ滝に行ったのは, この時期になれば水量は減少するので,普通の登山靴で歩けるようにな るからだ。 と言うわけで,今年も昨年と同じ時期にこの滝を訪れることにした。沢の水量は少なけれ ば歩きやすいが,反対に,滝の水量は少ないと迫力に欠けることになる。
 今回は 庵滝 を目指すことにした。 美弥古滝 も候補には挙がったのだが,次の機会にまわすことにした。 庵滝 については,登山道はないものの,ネットにはいくつかのレポが載っていた。 随想舎発行,奥村隆志著「日光四十八滝を歩く」 も参考にした。
 日光バイパス は,早朝なのにかなり車が多い。奥日光の紅葉シーズンは終わりに近づいていたが,日光 は依然として人気の観光地だ。第二いろは坂は2車線なので,遅い車を追い越すことができる。セン ターラインをまたいで走っている車もあって,慎重に追い越した。
 明智トンネル を出たところから 奥白根山 が見える。 先日降った雪で真っ白に見えた。

 赤沼駐車場 へは6時50分頃に着いた。既に,たくさんの車が停まっており,中には 車中泊 をしたと思われる車もあった。
 この時期,冷え込んだ朝には小田代原で 霧氷 が見られる。それをねらってか,カメラマンの姿が多い。そのため,週末には小田代まで の 「早朝バス」 が運行されている。最終の早朝バスが 7時 に出るというので,いそいで朝食を食べ,バス停に向かった。乗客は私の他に観光客が3 人の計4人だった。
 バスの運転手に, 「昨年来たときには霧氷がきれいだったのだが」 と言うと, 「今年は昨年より1ヶ月くらい遅れている」 と。確かに,昨年は駐車場の回りが霜で真っ白だったが,今日は僅かに霜が降りたのが確 認できる程度だった。
 バスが 小田代のバス停 に着くと,帰りのバスに乗る客の長い行列ができていた。全員はとても乗り切れそうにな い。乗れない人は歩いて戻るか,1時間半後の次のバスを待つしかない。
 慣れたカメラマンは, 折りたたみ自転車 を車に積んできており,それを利用している。 最近では 電動アシスト の付いた折りたたみ自転車もあるようだ。

 小田代原のカラマツ は紅葉の盛りを過ぎ,半分以上葉を落としていた。紅葉の最盛期には,黄金色に輝き 「金屏風」 と言われている。

 まだ帰らずに粘っている カメラマン もたくさんいた。これも小田代原の風物詩の一つだ。  小田代でバスを降り, 弓張峠 を目指した。途中で,西ノ湖を目指すという3人組に追いついた。


 弓張り峠 から,ヘアピンカーブをショートカットして,再び車道に出る。
 私は,山行のレポには原則として地図を載せ,歩いたルートを示して きた。 しかし,今回私が歩く 庵滝 へのこのコースは,道はもちろん無く,踏み跡も,ルートと言えるほどにはまとまってい ない。 自分で ルートファインディングできない人は入るべきではない と思うので, 敢えて地図にルートを書き込まなかった し,記事の中でもルートについては詳しく記述しないことにした。
 車道から, 西ノ湖に向かう遊歩道 に入る。 



 遊歩道を少し歩くと, 外山沢 に架かった橋を渡る。今日は, ここから河原に降り,河原を歩いて滝に向かった。

 歩き始めは こんな状態。 まだ歩きやすい。

 河原に歩くスペースが無くなれば,飛び石伝いに 対岸に渡ったり, 崖を登って 林の中を歩いたり した。

 大きな倒木 が河原を横断している。

 沢の正面に僅かに雪を頂いた稜線が見えた。 前白根山から白根隠山に連なる稜線 だ。

 足跡 はいくつか確認されたが,ルートと言えるほどにはまとまっていない。
 けもの道 人の踏み跡 の区別も難しい。もともとこの両者は重なっている場所も多く,厳密に区別できるもので はないのだからしかたない。誤ってけもの道を辿ってしまうと危険なので,十分に注意しなければな らない。
 誰が積んだのか 小さなケルン があった。

 緑沢との合流点 は,広い河原になっているので明瞭でなく,水量の多い沢を辿っていったら,突然,木立 の後に 大きな滝 が見えてきた。地形図に書かれている 庵滝 はもう少し奥のはずだが,これも立派な美しい形の滝だ。


 奥村隆志著「日光四十八滝を歩く」 によれば, 庵沢 には 5つの滝 がある。 最も奥のF5が地形図に示してある「庵滝」 だ。しかし,特別な装備がない人には F1 までしか辿ることができず,一般的にはこのF1を「庵滝」と呼ぶこ とが多い。 その時は F5 は「外山滝」と呼ぶ らしい。


 F1は高さが20〜25m だが,折口から直下する水流は十分に迫力があるし,美しい。
 F2 は「連続した小さな滝」,  F3 は「岩壁中程から湧き水を白布のように落とす滝」,
 F4 は「ザイルを使用してやっと越えられる2段の滝」,
 F5 は「岩を豪快に駆け下る滑状の大滝」 と,この本では紹介している。
 F5は落差60mでこの中では最大の滝だ。いつの日にか,F5にも行ってみたい。
 渇水期ではあるが 迫力十分 だ。


 滝全景が入る位置まで後退し写真を撮った。セルフタイマーをかけて10秒間に移動で きる距離は短いので 滝より随分手前に立っている。 そのため,滝が大きく見えない。

 岩壁の紅葉 はもう終わりだが,まだ十分にきれいだ。


 滝を眺めたり写真を撮ったりしてたっぷり遊んで,帰途に就いた。まだ 正午前 で時間も たっぷりあるので,できれば 緑滝 にでも行きたかったのだが,帰路の 交通渋滞 を考え,このまま戻ることにした。
 往路 では主として 河原 を歩いたが, 帰路 ではそれにこだわらず,歩きやすい所を探して, 林の中 も歩いた。林の中には踏み跡のはっきりした部分もあったが,それは連続したものではな く, 安心して辿れるものではなかった。
 弓張り峠 に近づいたところに, 立派な建物 があった。前述の書物には「 観測ステーション 」と書かれているが,詳細は分からない。弓張峠からこの建物まで車道が通じているのだ が,私は敢えてそこへは行かず,林の中を歩いて,朝歩いてきた 西ノ湖へ向かう遊歩道 へでた。ここからは,遊歩道を辿り小田代原に向かった。

 小田代原の手前のミズナラ林 で,ボランティアと思われる人たちがミズナラの幹にネットを巻いていた。ここは小田代 原を取り囲む 鹿よけ柵 の外側なので,冬季にシカの食害を受けることがある。これは,シカの食害からミズナラ の幹を護るための処置だ。

 小田代原から赤沼に向かうと,戦場ヶ原分岐の手前で 湯川を渡る。 この橋は通称 「たいこ橋」 と呼ばれているが,痛みがひどかったので補修工事をしていた。新しい材木で,作りたて の形に戻った。

 今日は,晩秋の爽やかな空気の中,好天に恵まれ,静かな山歩きができて満足の一日だ った。 朝,外山沢の河原を歩き始めてから,帰路,小田代原に着くまで,誰に も会わなかった。
 クマが怖かったので鈴を鳴らしたり口笛を吹いたりしながら歩いたが,そのおかげかク マには会わずに済んだ。その代わり, キジ,カワガラス,シカ,モグラ などの歓迎を受けた。
 この地域は,奥日光でも数少ない 自然のまま が残されている地域で,自分でルートを見つけながら歩く楽しさを味わわせてくれた。 お願いですから,ここには標識を立てたり,ペンキマークを付けたり しないでください。
 白いリボンが所々に有ったが,これもつけないでほしい。世の中には勘違いしている人 がいて,「人助け」と思ってよけいなことをする。「生兵法は大怪我の元」で, 中途半端なマーキングは,返って遭難者を創り出す ことにもなりかねない。
 全部の場所が「誰でも行ける場所」でなくてもいいでしょう。中には,行ける人だけが 行ける場所というのがあっても良いと思うのだが。

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