中 禅 寺 山

期日 2011年(平成23年) 2月5日(土)
 


コース・タイム
  宇都宮(6:30) ⇒ 歌ヶ浜(7:15)
    歌ヶ浜(7:50) → 狸窪(8:30) → 取り付き点(8:45) → 1655(中禅寺山)(11:00-45) →
     → 阿世潟峠分岐(12:20) → 1432P(12:30) → 湖畔(13:00) → 狸窪(13:40) → 歌ヶ浜(14:05)
  歌ヶ浜駐車場 ⇒ 宇都宮

同行者
   単独

 その山の名前が「中禅寺山」ということは,その山頂に立つまでは知らなかった。半月峠の北西にある1655ピーク,これが中禅寺山と言われる山だ。国土地理院の地形図にも,昭文社のハイキング地図にもその名前の記載はない。その他,手元にあるいくつかのガイドブックを見てみたが,そのいずれにも中禅寺山の記載はない。この名前が広く認められているものなのかは疑問が残るが,ここでは「中禅寺山」と呼ぶことにする。
 中禅寺湖周囲の主だった山には,いずれも登山道が整備されているが,登山道が無くても魅力的な尾根がたくさんあり,地図を眺めては思いを馳せていた。昨年12月にはその一つの社山北方尾根を歩き,大感激をした。今回は,中禅寺山から北方に延び,八丁出島に繋がる尾根を登ってみることにした。
 積雪期に半月峠に登るとき,夏道を辿るのが最もたやすいが,ただ一個所,雪崩の危険の有る場所がある。そこを避けるには,尾根を登るか谷を登るかのどちらかだ。2週間前にドラ吉さんと谷を登って峠に達しようとしたが,谷コースは大きな石が積み重なり,極めて歩きにくかった。そこで,今回は,尾根を登ることにした。
 天気予報はあまりよくなっかたが,日光道路を進むに従って
日光連山がはっきりと見えるようになり,朝日に輝く男体山も見ることができるようになった。
 第2明智トンネルを出たところから,奥白根山を見ることができる。ここを通るときはいつも気にして眺めているのだが,すっきりと見える日は多くはない。今日は,朝日を受けて輝く白根山を見ることができた。それにしても,手前の電線が邪魔になる。
 大鳥居の手前を左折して歌ヶ浜に向かう。もう,路面に雪は残っていない。

 歌ヶ浜の駐車場に車を入れて,社山を眺めた。朝日を受けて輝いている。こんな良い天気にあの山に登れば,最高だろうなと思ったが,今日のねらいは別の山なので,社山は次の機会に。

 男体山も綺麗だ。

 奥白根山は雲の陰に入り,先ほどの輝きはなくなった。

 いつもは歌ヶ浜の駐車場に車を置くのだが,今日はもう少し進んで,ゲート前の駐車スペースに車を置くことにした。半月峠に通じるこの道路は,現在は冬期閉鎖中でゲートが閉じている。その前の路肩に,10台ほどの駐車スペースがある。この距離は僅かで,歩いても5分とかからないのだが,今日はなんとなくそうしたかった。私が到着したとき,そこにはまだ車は停まっていなかった。車内で朝食を食べ,準備している間に2台ほどの車がやってきたが,直ぐにUターンして戻っていった。


 今日の服装は,ボトムはCWX冬用のズボン(防水加工),トップは,高拡散シャツにモンベルのクリマブロック。その上にラテラの3シーズンジャケットを着た。

 ザックの中には,フリース1枚とエアテックのジャケットが入っている。12本爪アイゼンを持ち,ピッケルとスノーシューをザックにくくりつけた。毛糸の帽子を被り,ダブルストックは手に持って歩き出した。


 ゲートの手前から,湖畔の道に降りた。いつもツルツルに凍っていて難儀する車道には雪が残っており,苦労せずに歩けた。

 開けたところに出て,今日登る山を眺めた。社山の左手前に黒く大きく見える山が「中禅寺山」だ。山頂から右手前に下り,八丁出島に繋がる尾根が,今日登ろうとしているところだ。

 この尾根を登る。ブッシュもなく,気持ちよさそうな尾根だ。



 奥白根山から続くスカイラインが手前の山に隠れるところに見えるのが錫ヶ岳だ。奥日光で最も深いところにある山だ。

 狸窪にゲートがある。ゲートまでは除雪されていて歩きやすかったが,ここからは除雪されていない。

 ゲートの先に,半月峠に行く分岐がある。半月峠に向かう一人分の壺足の足跡があった。私がドラ吉さんと2週前に歩いた時は往復ともスノーシューで歩いたので,これは私たちの足跡ではなかった。その他,多くの足跡は,社山の方に向かっていた。

 社山へ向かう道は,八丁出島の根元を通過する。ここはチョットした鞍部になっており,左に登っていく尾根が,今日の目標の尾根だ

 尾根が平地に出るところでは,先端の傾斜が急になっていることが多いが,この尾根も例外ではなかった。そのため,その先端から尾根に登ることは諦め,左側の斜面をトラバースぎみに登り,途中で尾根に上がることにした。

 身体が温まってきたので,ジャケットを脱ぎ,毛糸の帽子も脱いでバンダナを巻いた。ここからスノーシューを履いて歩いた。この時の気温は−3.5℃(中宮祠測候所)

 この辺りで積雪は50cm程度。スノーシューでも10cm程度は潜る。斜面を登るときには,ヒールリフターをセットして登ったが,足首に負担がかからず,快適だった。傾斜のきついところでも,キックステップを繰り返すことで足は流れずに登ることができた。やはり,MSRライトニングはすばらしい。

 標高1400m付近の傾斜が最もきつかった。このコース全体を通して危険個所は無かったが,強いて言えばこの辺りだ。滑落すると止めるのが難しい。私も,万が一を考えて,スノーシューを止めてアイゼンに履き替え,ストックもピッケルに持ち替えた。
 歩いてきた足跡 雪も深く,傾斜もきつい。

 標高で1450mを越えた当たりから傾斜が緩くなり,積雪も少なくなった。歩きやすくなりホッとした。

 急斜面を登り終えた。今日は風もなく最高の登山日和だ。汗かき性の私だが,あまり汗をかかずに登ることができた。身体にかいた汗は,汗を拡散してくれるシャツと,うまく蒸発してくれるソフトシェルのおかげで不快な感じがしない。今日のような天気では,ベストな選択だった。
 木々の向こうに見える空が目の高さになってきた。半月峠とほぼ同じ高さまで登ってきた。でも,山頂まではあと60mほど登らなければならない。



 登ってくる途中でもシカの足跡がたくさん見られた。かつては,この付近のニホンジカは,足尾方面に降って冬越ししたのだが,最近ではここに留まって冬を越す「越冬ジカ」が増えた。まさにその姿だった。

 この高さまでシカが登ってくる理由が分かった。山頂付近では積雪が少なく,雪の下の笹を食べることができるのだ。雪を掘り起こして笹を食べた痕がいたるところに見られた。笹は葉が食べられ,茎だけがツンツンと立っている。

 取り付き点から2時間15分で山頂に達した。山頂は雪に覆われたなだらかな頂で,陽光がさんさんと降り注いでいた。

 山頂に腰を下ろし昼食タイムにした。フリースとジャケットを着て,ザックから外したスノーシューの上に腰を下ろした。風も殆ど無く,眠くなりそうなひとときだった。
 山頂はあまり見晴らしは良くない。でも,男体山の勇姿も直ぐ近くに見られる。

 南東方向を見ると,半月山が見える。あの白く見えるところを登るのだが,そこからの見晴らしは抜群で,そのためだけにでもここを登る価値はある。今日は,ここから半月山に登り,狸山の北尾根を降る計画だったのだが,時間が過ぎていることと,多少バテていることもあり,この計画は中止することにした。

 近くの木にプレートが取り付けられていた。「中禅寺山 1650M」 この山には名前があったのだ。公的なプレートではないらしいが,金属板に釘打ちで文字を浮かび上がらせたもので,かなりしっかりしたものだ。


 ここからの下山方法はいくつかある。登ってきた道を下るのも一つの方法だが,せっかくここまで登ったのだから,このチャンスを無駄にしたくはなかった。
 
阿世潟峠を地図で眺めると,主尾根から1432ピークを通って湖畔まで伸びている枝尾根がある。今日はここを下ってみることにした。
 主尾根には,
茶ノ木平から半月山,半月峠,阿世潟峠,社山へと続く縦走路がある。途中までこの道を進む。
 山頂から南西に延びるはっきりした尾根があるが,縦走路はこの尾根ではない。ルートは,途中で右斜面を降り,その先の尾根を降る。


 途中少し開けたところから社山を眺めた。いつも眺めている登山路からの姿とは違う新鮮な姿だ。

 左側が崩壊した鞍部の先に小さなピークがある

 縦走路はここで右に直角に折れ曲がる。真っ直ぐに進む尾根があるが,ここ(写真↓)を降ると足尾方面に降ってしまうので,注意が必要。



 斜面の下に,ルートを示すマークが見える。この斜面を降り,その先に続く尾根を進む

 ピークから少し降ると,尾根が二つに分かれる。左の尾根が縦走路で,阿世潟峠だ。正面に社山が見える。



 この尾根が,今日歩こうと思う尾根だ。ヤセ尾根だが,歩きやすそうだ。尾根の向こうに1432ピークが見える。

 かなりのヤセ尾根だが,多くのシカの足跡がある。驚いたことに,シカも雪庇を避け,左に寄ったところを歩いている。どんな風にしてこんな智恵を身に付けたのだろうか。正面のピークが1432ピークだ。

 1432ピーク。 振り返ると,正面奥に中禅寺山が見える。

  同じ場所から見た社山

 予想していたとおり,素晴らしい尾根だ。こんな山歩きができて嬉しくて仕方ない。


 未知の尾根を歩くとき,その尾根の先端にはどんな世界が待っているのかいつもワクワクどきどきする。ルンルンで歩ける尾根なのか,とても降りられないような斜面になっているのか。これが未知のルートを歩く醍醐味だ。

 この尾根も,多くの尾根がそうであるように先端部が急傾斜になっていた。そこで,少し手前を右に降ることにした。途中に,シカの寝床をたくさん見つけた。これはそのひとつ。雪をかき分け,その下の落ち葉を出してそこに寝ている。

 最後の20mほどは,シリセードで楽しみながら降った。単独行の場合,よほど安全な場所でない限り,シリセードは封印している。やはり,急斜面には危険が潜んでいるのだ。
 1432ピークから30分で湖畔に降り立った。
男体山は相変わらずの姿で出迎えてくれた。

 ゲート前の駐車場まで無事に戻ってきた。車が増えていた。


 今日は,最高の天気,最高のコンディション,最高のルートで,日光の山を最大限に楽しむことができた。

 
冬山は,何時牙をむくか分からない。あまりいい気にならずに,謙虚な気持ちで,山歩きを続けたい。


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