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社 山  阿世潟沢遡行

2011年(平成23年)4月2日(土)


コース・タイム
 宇都宮(5:50) ⇒ 歌ヶ浜駐車場(6:40-朝食)
  駐車場(7:20) → 狸窪(8:00) → 阿世潟(8:40-50) → 阿世潟沢 → 縦走路(11:30-40) → 山頂(12:40-昼食-13:05) → 阿世潟峠(14:15-35) → 阿世潟(14:45) → 狸窪(15:20-25) → 駐車場(16:00)
 歌ヶ浜駐車場(16:20) ⇒ 宇都宮(17:30)

同行者
 キクさん

 2011年3月11日  東北地方の太平洋を震源とする大地震が発生した。後に 「東日本大震災」 と名前が付けられたこの災害は,私にとってはもちろん,日本にとっても過去に類を見な い大惨事で,多数の犠牲者がでた。特に 原発の事故 は今後どうなるかの予測が付かないだけに心配な状況だ。 気が滅入り,意欲が湧かない 状態だが,直接の被害を免れた我々にとって大切なことは,出来るだけ普段の生活を心が け,日本経済の沈滞を防ぐことだ。復興には多額の経費がかかるし,長期に渡ってくじけずに維持で きる精神的な強さも求められる。
 私が山に出かけたところで,どれほどの経済効果があるかは分からないが,まず, 自分自身の元気を取り戻すために 山歩きを再開することにした。
 昨年,3月末に 社山 に出かけ,楽しい雪山のハイキングをすることが出来たので,今年も 社山 を選んだ。ただし,通常のルートでは面白くないので, 阿世潟沢を遡り, 裏側から社山に登ることにした。今回は, キクさん も同行した。
 宇都宮を6時少し前に出て 歌ヶ浜の駐車場 には1時間弱で着いた。駐車場に着いて驚いた。駐車場が車でいっぱいなのだ。聞いてみ ると, 中禅寺湖の岸釣りが今日解禁 なのだそうだ。この状態だと,ゲート前の駐車スペースはもっと満杯だろうから,歌ヶ浜 駐車場に空きスペースを探し車を停めた。


 空は曇って陽射しはないが,見通しは良く, 奥白根山 が良く見えた。


 車内で朝食を食べ,身支度を調えた。ボトムは CWX に撥水加工の入った 冬用ズボン。 トップは,吸汗拡散 Tシャツ にモンベルの プリマブロック。 その上にジャケットを着たが,これは直ぐに脱いでしまった。 スノーシュー をザックにくくりつけ, 6本爪アイゼン を持った。毛糸の帽子を被ったが,これも直ぐに脱いでしまい,いつものバンダナを巻い た。
 予想どおり, ゲート前の駐車スペース は満杯で入りきれない車が路上にまではみ出していた。

 路面は 凍結 しており,滑らないように気をつけて歩いた。これが意外と疲れる。

 少し進むと路面が 雪で覆われる ようになった。歩きにくいが,滑るよりは良い。

 狸窪には 民宿 があるが,まだ営業はしていない。周囲には, 進入禁止を無視して入り込んだたくさんの車が停まっていた。 いつもここを通るときに,休憩場所として利用させてもらっていた物置が倒壊していた。 多分これも地震のためだろう。

 たくさんの 足跡 社山 の方に向かっていた。 半月峠 に向かう足跡はなかった。やはり, 社山は冬でも人気のある山なのだ と思ったのだが,実はこの大半は 釣り人 のものだった。

 小寺ヶ崎 を過ぎたところの湖岸に テント が5張りほど張ってあった。ここは国立公園内で,指定場所以外での キャンプは禁止 されている。キャンプ禁止の看板も設置されており,知らないはずはない。何人かで連れ 立ってきているようだが, みんなで破れば怖くない という心理なのだろうか。

 阿世潟 まで1時間20分かかった。まあ,雪道だから仕方ない。ここから先は雪の状態を見て決 めることにしていたのだが,雪もかなり締まっており,予定通り 阿世潟沢を詰める ことにした。

 足跡 が千手ヶ浜の方に向かって続いている。この足跡が阿世潟沢コースへ行ったことも考えら れたのだが,この足跡は湖畔に沿って付いており,ここから阿世潟沢を登る方向へ進んだものは確認 できなかった。

 湖岸を 千手ヶ浜 に向かう道を,途中で左に折れ,いよいよ 阿世潟沢の遡行 に入った。阿世潟沢は,上部は狭い谷になっているが,下部は広がり, 大きな平地 になっている。
 この平地は,どこを歩いても迷うことはないだろうが, かなり凹凸があり, ルートの取り方によっては 疲労度と所要時間に大きな差 が出そうだ。そう言う意味で, ルートファインディングに腕前を発揮できる ルートだ。ルートファインディングに自信のない人は単独では入らない方が良い。

 概ね平坦だが, かなり凹凸がある。 でも歩きやすい方だ。足が潜るようになったので, スノーシューを履いた。 ここから稜線に出るまでスノーシューは脱げなかった。

 沢筋 はかなり掘れていて,歩くのは困難だ。下部では 沢底には下りない 方が良い。

 ルートは 高いところ を繋ぐように選ぶ。この方が先が良く見通せるし,雪も少なく,起伏も少ない

 こんな奥にも 砂防ダム が造られていた。建設のための車道が阿世潟から沢の対岸を通って通じていた。

 沢に沿ってかなり登ったところで, 沢の底に下りた。 傾斜は急になるが,視界は開け,歩きやすい。

 崩壊地には木が生えていない。 真っ白で綺麗だが,こういうところは 雪崩の発生しやすいところ なので注意しなければならない。

 斜面から転がり落ちた雪玉 が集まっている。雪玉の転落が連鎖的に起これば,それが雪崩だ。上方に注意しながら通 過した。

 雪崩 の危険さえなければ素敵な場所だ。 雪の上にある岩 は,右側の斜面から落ちてきたもの。この時期は 落石 にも注意しなければならない。

 雪の上を小さな虫が歩いている。別名 雪虫 とも言う セッケイカワゲラ だ。 雪虫 は俳句の世界では 春の季語
 セッケイカワゲラ は成虫にも翅がなく,雪渓の上を歩き回って一生を終える。

 沢を行き止まりまで登り詰めてしまうと,正面の斜面は急で登ることが出来ない。ドン 詰まりの少し手前で 右側の雪の斜面 を登る。

 正面左奥 稜線 が見えた。写真では傾斜がよく分からないが,かなりの傾斜がある。雪の上に残る鋭い線 は 落石が転がった跡。 この程度の大きさでも直撃を受けたら命に関わる。

 稜線 は雪融けが進んでいた。日当たりが良いことと,風が強いために雪があまり積もらないの だ。 社山を裏側から望む

 鞍部の西隣にあるピーク シカの群が,ピーッという鋭い鳴き声を発しながら歩いていた。

 男体山 の手前に, 昨年12月に歩いた稜線 が続いている。

 社山の山頂からは北方の見晴らしがあまり良くない。そこで,山頂少し手前の見晴らし の良いところで パノラマ写真 を撮った。
  (写真をクリックすると大きな写真が見られます。)


 奥白根山  左の緩やかなピークが 白桧山

 雪の融けたところに何か白い物が見えた。近寄って見ると, シカのあごの骨 だ。かなり大きい。持ち帰ろうと思って拾い上げたが,自然のものは自然に返すのがいい と思い直し,登山者の目に付きにくい場所にそっと置いてきた。

 山頂 で昼食を食べた。今日は気温が高いが,さすがにじっとしていると寒い。

 天気は,予報に反して,午後ほど良くなってきた。陽射しも出てきて 残雪が眩しい  ゆっくりしたかったが,今日はいつもより時間が過ぎているので先を急ぐことにした。

 阿世潟峠

 阿世潟  朝,ここを通過してから5時間半ほどかけて一回りしてきたことになる。

 いつもながら,ここから 歌ヶ浜 までの道のりが 長くて苦痛だ  今日は足の痛みが出ないだけ良いのだが,ただ黙々と歩いた。
 GPSで今日歩いたコースをトレースすると,ちょうど 13km になった。雪道の13kmはかなり大変だった。7時20分に歩き出して,駐車場に戻っ てきたのはちょうど16時だった。合計で60分ほどの休憩を含んで 8時間40分 の行程だった。
 久しぶりに奥日光の自然に触れることができ,心が癒された山行だっ た。

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