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戦 場 ヶ 原 NPV特定種開花調査

2011年(平成23年) 5月22日(日)

 日光パークボランティア では,湿原の植物がどの程度シカの影響を受けているかを調べるため,いろいろな調査活動 を行っている。 「 特定種開花調査 」とは, シカが好んで食べる植物 のいくつかの種類(特定種)について,その開花状況を数年間に渡って調査することで,シカ の摂食による影響を調べようとするものだ。今回調べるのは「 クロミノウグイスカグラ 」だ。

クロミノウグイスカグラについて

 「 朝日百科 世界の植物 」(朝日新聞社)では, クロミノウグイスカグラ についてこのように述べている。
 「クロミノウグイスカグラ L.caerulea L.ver. edulis Turcz.ex Herder はアジア東北部の寒い地方に広く分布する。日本では本州中部以北と北海道に野生し,特に 日光の戦場ヶ原 に多い。<倉田悟>」
 ところが,このように書かれた「 日光戦場ヶ原 」で クロミノウグイスカグラ がシカの食害の影響などであまり見られなくなってしまった。
戦場ヶ原・小田代原 は,標高1400mに位置する湿原で,特有の植物が生育しており,全国的に見ても貴重な地域 だ。ところが,近年になって野生のシカが増えだし,その食害によって植物がダメージを受けるよう になってきた。そこで,シカが湿原に入れないようにするため,栃木県は 1998年 に,小田代原の周囲を 電気ネットの柵 で囲んだ。その結果,急速に植物の生育に改善が見られた。そのことを受け, 2001年12月 に,環境省が1億4,400万円をかけて 戦場ヶ原全体をカバーするネットを設置 した。しかし,戦場ヶ原は,その中央を国道120号線が横断しており, 完全に封鎖することはできなかった ため,柵の中に侵入するシカが徐々に増え続けた。その結果,当初はかなりの改善が見られ たが,再びシカの影響を受けるようになってしまった。そこで,柵内に侵入したシカが増え過ぎない ようにするため,積雪期にシカの駆除を行い,現在では植生の回復が見られるようになった。

クロミノウグイスカグラ

(2011.5.22 ) 果実(2009.7.4)

 ボランティアハウス に集合時刻より早く着いたので, 兎島 まで散策することにした。
 湯の湖畔 では,満開の オオヤマザクラ が散り始めていた。オオヤマザクラは,大きな花で,ピンク色も濃くたいへんきれいだ。


 温泉街 から湯の湖に流れ込む用水に オイルフェンス が張られていた。これは, 地震 が原因と見られる事故で,旅館の暖房用重油が流れ出したもので,現在では湖面の重油は 完全に除去されている。重油は湯川には流れ込んでいないが,念のため,湯の湖と湯川の釣りは5月 末まで禁漁となっている。


 リョウブ の芽は可愛い。「令布飯」にも使われる山菜で,癖が無く美味しい。


 この時期に目立つ白い花は「 オオカメノキ 」別名を「 ムシカリ 」という。


 トウゴクミツバツツジ は,まだ頭に帽子を載せたままだ。


 皮をむかれて真っ白になった木があった。犯人は ニホンザル だ。餌のない冬の間の貴重な食糧なのだ。


 兎島 の付け根にある 小湿原 。やっと芽を出し始まったところだ。

 兎島を時計回りに一周した。 兎島 は,「島」と言っても独立した島ではなく, 半島 (出島)だ。 私が子供の頃には,冬に,この前の湖面で スケート場 が営業していた。今は氷の厚さも薄く,危険のため,その上に乗ることはできない。
 対岸の建物は 日光湯元レストハウス ,中央奥の岩壁が 金精山 ,左奥の残雪の山が 五色山


 兎島の付け根のところに 葛西善蔵文学碑 がある。


 葛西善蔵 は 大正13年9月湯元温泉の 板屋旅館 に投宿。そこで私小説「 湖畔手記 」を書き上げたという。おせいは愛人の名。碑文は自筆。
 ボランティアハウスにもどって打合せをし,調査に出発した。

 まず, 赤沼駐車場 に移動して,戦場ヶ原の自然研究路を往復して, クロミノウグイスカグラ の花数を調べた。
 この時期,戦場ヶ原では多くの小鳥を観察できるのだが,今日は意外と少なかった。  これは, ニュウナイスズメ


 まず, ミヤマウグイスカグラ の花が目に飛び込んできた。花全体が細かい毛で覆われているのがミヤマウグイスカグラ の特徴だ




 クロミノウグイスカグラ は,まだ大部分が蕾のままで,咲いているものは少なかった。花数は,昨年同時期に調査 したものより少なかった。



 青木橋から引き返すときになって雨が降ってきた。昼頃までは降らないだろうと思って いたのだが,意外と早く降り出した。


 赤沼駐車場に戻り,宇都宮大学演習林の中に設置してある エンクロージャ の観察に向かった。エンクロージャの中に咲いている花はなかった。



 カラマツの雌花 を見つけた。とにかく小さい花なので,撮影には苦労する。
 これは, Canon PowerShot A720IS  で撮影したもの。手動焦点で撮影したものだが,ピントは完全ではない


 これは, CANON EOS 50D  で撮影したもので,これも手動で撮影したが,これもピントは不完全だ。


 光徳沼 の近くにもエンクロジャが設置してある。これを調査に行った。
 光徳沼は,水が溜まらなくなっており,水位が下がっている。たくさんの ヤチボウズ が見られるが,大切に残したい。泥の上に足跡があるのが気になる。


 今日は,あいにくの天気だったが,雨もまた良いものだと思えるようになった。この時 期,雨が降ると気温が下がり,寒くなる。
 戦場ヶ原が,ズミの花やワタスゲの穂で覆われるのももうすぐだ。

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