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戦 場 ヶ 原 NPV特定種開花調査

2013年(平成25年) 5月25日(土)

 今日の,開花調査の対象種は, クロミノウグイスカグラ  だ。

 「 朝日百科 世界の植物 」(朝日新聞社)では, クロミノウグイスカグラ についてこのように述べている。
「クロミノウグイスカグラ L.caerulea L.ver. edulis Turcz.ex Herder はアジア東北部の寒い地方に広く分布する。日本では本州中部以北と北海道に野生し,特に 日光の戦場ヶ原 に多い。<倉田悟>」
 ところが,このように書かれた 「日光戦場ヶ原」 クロミノウグイスカグラ がシカの食害の影響などであまり見られなくなってしまった。
 戦場ヶ原・小田代原 は,標高 1400mに位置する湿原で,特有の植物が生育しており,全国的に見ても貴重な地域 だ。ところが,近年になって野生のシカが増えだし,その食害によって植物がダメージを受けるよう になってきた。そこで,シカが湿原に入れないようにするため,栃木県は 1998年 に,小田代原の周囲を 電気ネットの柵 で囲んだ。その結果,急速に植物の生育に改善が見られた。そのことを受け, 2001年12月 に,環境省が1億4,400万円をかけて 戦場ヶ原全体をカバーするネットを設置 した。戦場ヶ原は,その中央を国道120号線が横断しており, 完全に封鎖することはできなかった ため,柵の中に侵入するシカが徐々に増え続けた。その結果,当初はかなりの改善が見られ たが,再びシカの影響を受けるようになってしまった。そこで,柵内に侵入したシカが増え過ぎない ようにするため,積雪期にシカの駆除を行い,現在では植生の回復が見られるようになった。
 日光パークボランティア では,湿原の植物がどの程度シカの影響を受けているかを調べるため,いろいろな調査活動 を行っている。  「特定種開花調査」 とは,特に シカが好んで食べる植物 のいくつかの種類 (特定種) について,その開花状況を数年間に渡って調査することで,シカの摂食による影響を調べよ うとするものだ。今回は 「クロミノウグイスカグラ」 の花数について調べる。
クロミノウグイスカグラ

 (左)  (右)果実

 あまりに良い天気 だったので,朝,湯元に行く途中, 歌が浜 に寄ってみた。 対岸の 社山 が静かな湖面に姿を写していた。

 望遠レンズで覗くと,登山道がよく見える。 社山 は春夏秋冬何時登っても良いところだ。また近いうちにあそこを歩きたい。

 奥白根山 のドームも近くに見えた。空気が澄んでいるので,意外と近くに見える。

 1週間前 にはあそこに登ったのだ。見えるところの雪は少なくなったが,樹林帯では,まだ,たっ ぷりと雪が残っていた。


 歌ヶ浜 を後にして, 湯元 に向かった。それでもまだ時間が余っていたので,付近を散策した。
 日光湯元 県営駐車場 の周囲には シウリザクラ が植えられている。いまはまだ蕾の状態で,ブラシのような白い花を付けるのは6月中旬 になる。


 シウリザクラ ウワミズザクラ はよく似ていて,花を見て区別するのは難しいが,葉の基部で見分けられる。ウワミズザ クラでは 円形 だが,シウリザクラでは 心形 になる。


 メンバーが揃ったので, 赤沼駐車場 まで移動し,開花調査を実施した。
 戦場ヶ原 は今, 木道の工事中 だ。迂回路は作ってあるのだが,概ね単線で,そこで対向者とすれ違うことはできない。 そのため,小学生の団体が増えるこれからの混雑が心配だ。

 湿原の至るところに, 工事用の資材 が積まれている。ヘリで運んで降ろしたままのようだが, 踏みつぶされている植物が心配になる 。もっとも,一般的に言えば,植物の生命力は強いので,仮にダメージを受けても数年で 元に戻ると言われているが,ダメージは少ないに越したことはない。

 湿原では, クロミノウグイスカグラ が咲き始めた。薄黄色で目立たない花だが,昨年より増えているように感じた。

 花数のカウントでも,昨年を上回っていた。 着実に復活している と思って良いだろう。

 ズミ の蕾が,随分と赤くなってきた。昨年より早めの開花になるだろう。

 ズミ の木にも個性があり,色の濃いものと,薄いものがある。これは色の薄いもの。

 ワタスゲ の花も終わり,もうじき白い穂になる。

 ヒメシャクナゲ も咲き始めた。数がもう少し増えれば,人気者になるのだが,今は僅かしかなく,探すの が大変だ。

 メギ も蕾だ。もうじき可愛い花になる。


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