閉じる
ハクサンチドリ
白山千鳥
ラン科 ハクサンチドリ属

 中部以北の本州と北海道に分布し,高山帯や亜高山帯の湿った草地に生育する。茎の高 さは10〜40cm。紅紫色の花を穂状に数個〜10数個つける。花びらは蝶形で,大きさは15〜 20mm。 ハクサン は発見地の白山, チドリ は花の形が千鳥に似ていると言うことで付いた。花の色には変異があり,濃いものから白 色に近いものまである。

 30歳の頃だった。私は,友人と二人で奥日光の切込湖・刈込湖ハイキングコースを歩 いていた。山王峠から切込湖の方に急斜面を下ったところに,「涸沼」という乾燥湿原がある。雪解 けのある時期だけは水がたまるが,普段は乾燥した草原で,多くの植物が見られるところである。そ こで私は,薄紫の花を付けた小さな植物を見つけた。花の形といい,その色合いといい,なんとも可 愛く,私の心を惹きつけた。それが ハクサンチドリ だった。一緒に歩いた友人は,当然,その名前は知っており,そのほかにも色々な植物の 名前を教えてくれた。
 私は,学生時代から山歩きが好きで,日光や尾瀬などを歩き回っていた。「山岳部」や 「ワンゲル」等には属さず,気のあった仲間と気ままな山歩きを楽しんでいた。高山植物などに興味 がなかったわけではないが,もっぱら歩くこと自体を楽しんでいた。大きな荷物を担ぎ,前を歩く人 の靴の踵だけを見つめて,ただひたすら歩いていた。せっかく尾瀬を訪れても,どんな花が咲いてい たのかあまり記憶にない。
 ところが,この時の山歩きは,実にのんびりと,時間をたっぷりかけ,まさに「ぶらり, ぶらり」の山歩きだった。歩きながら,周囲を見渡したり,写真を撮ったり,それまでの山歩きのイ メージを一新させたハイキングだった。
 「ハクサンチドリ」 は, 白山 で発見されたことから ハクサン ,花が 千鳥 の姿に似ていることから チドリ ,合わせて ハクサンチドリ という名が付けられたと友人に教えられた。この花はの名は,しっかりと脳裏に焼き付け られ,もう忘れることはなくなった。このようにして私は,高山植物への興味を持ち始め,花の名前 を覚えはじめたのである。
 ハクサンチドリは,私に高山植物への興味を抱かせたきっかけになった花だ。


 2017.07.03  尾瀬沼


 2009.07.23  水晶岳


 2008.06.30  秋田駒ヶ岳


 2005.07.09  八幡平


 2005.06.26  尾瀬ヶ原


 2003.07.06  平標山