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イタヤカエデ
 板屋楓
ムクロジ科 カエデ属

 北海道から九州まで日本の広い範囲に分布するカエデの仲間。東北地方など寒い場所の 山地に多い。大きな五角形の葉が空を覆う様子を、板葺きの屋根に見立てて イタヤカエデ と名付けられた。
 秋に葉が黄色くなるカエデの代表だが,別名「トキワカエデ(常磐楓)」のとおり基本 的には秋季も緑色の葉を保ち,落葉直前のみ黄葉(稀に紅葉)する。寒冷地ではキレイに紅葉するが, 街中ではその大きさゆえに無残に剪定されているものが多い。
 イタヤカエデは生育地が広いため環境による変種が多い。葉の形は地方や樹齢によって 異なるが,基本的には対になって生じ,ほぼ円形で浅く拳状に裂け,先端が尖り,葉の縁にはギザギ ザがない。
 カエデの仲間としては花が目立つ樹種で,4〜5月頃の芽出し前,枝いっぱいに黄緑色 の花を房状に咲かせる。花が目立つため「ハナカエデ」や「ハナノキ」と呼ぶ地方もあるが、本種と は別にハナノキというカエデの仲間があってややこしい。
 花の後にできる実には2枚の羽根があり,10月頃に成熟する。
 カエデの仲間ではもっとも大きく育ち,材が白くて美しいことや弾力性に富むことから 建材,器具材のほか,家具,楽器,バット,こけし,スキー板などに使われる。
 早春,幹に穴をあけるとサトウカエデなどと同様に甘いシロップを採取することができ る。この樹液は煙草の香料にも使われる。


 2017.09.04 戦場ヶ原