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ワレモコウ
吾亦紅
バラ科 ワレモコウ属

 ほぼ全国に分布し,良く陽の当たる草地や土手に生育する。茎の高さは50〜100cm の多年草。花は暗赤紫色で,茎や枝の先に穂状に多数つく。花弁はなくがくの裂片が花弁のように見 える。葉は羽状複葉で小葉の数は5〜11枚
 2008年の中秋の名月は奥日光戦場ヶ原で迎えた。
 前日に磐梯山に登り,喜多方の道の駅で車中泊。そのまま会津街道(会 津では下野街道という)を南下して帰宅するつもりだったのだが,予報に反して天気が良く,戦場ヶ原 に寄り道をしてしまった。
 日の傾いた時刻の戦場ヶ原は,普段とは違った静寂の美しさがある。 湯元温泉で立ち寄り湯に入り,赤沼の駐車場に車を停め,夜明かしすることにした。
 広い駐車場に車はわずかで,キャンピングカーで賑わう湯元駐車場や 光徳駐車場とは全く別の世界だ。途中の雑貨屋で買ってきた即席麺を作り,カップ酒を飲んで寝袋に 潜り込んだ。物音が殆どしない,怖いほどに静かな世界に,中秋の名月が氷のような光を注いでいる。 隣に寝ている妻は,睡眠導入剤が効いたのか,もう寝息を立てている。
 眠れないまま,ポケットラジオのスイッチを入れた。ダイヤルを回し ていると聞こえてきたのが,”すぎもと まさと”「吾亦紅」
 私の母は18年前に85歳で他界した。最後は,嫁ぎ先の姉の元で義 兄や孫達に大切にされながら息を引き取った。8人の子どもを育て,戦前・戦中・戦後の混乱期を生 きてきた母は,幸せな最後だったと思う。
 「吾亦紅」を聞きながら母を思い出した。この歌を聴くのは初めてで はないのだが,無性に胸が締め付けられる。具体的に何をどう謝りたいと言うわけではないのだが, 「あなたに あなたに 謝りたくて」が,胸に響いてくる。
 「親のことなど 気遣う暇に 後で恥じない 自分を生きろ」  直接にそう言われた記憶はないが,後ろ姿でそう言っていたような気がする。


 2017.09.04 戦場ヶ原


 2009.08.23 戦場ヶ原


 2004.08.08 戦場ヶ原


 2003.09.14 戦場ヶ原