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 2005.6.25 尾瀬ヶ原
 30歳の頃だった。私は,友人と二人で奥日光の切込湖・刈込湖ハイキングコースを歩いていた。山王峠から切込湖の方に急斜面を下ったところに,「涸沼」という乾燥湿原がある。雪解けのある時期だけは水がたまるが,普段は乾燥した草原で,多くの植物が見られるところである。そこで私は,薄紫の花を付けた小さな植物を見つけた。花の形といい,その色合いといい,なんとも可愛く,私の心を惹きつけた。それが「ハクサンチドリ」だった。一緒に歩いた友人は,当然,その名前は知っており,そのほかにも色々な植物の名前を教えてくれた。
 私は,学生時代から山歩きが好きで,日光や尾瀬などを歩き回っていた。「山岳部」や「ワンゲル」等には属さず,気のあった仲間と気ままな山歩きを楽しんでいた。高山植物などに興味がなかったわけではないが,もっぱら歩くこと自体を楽しんでいた。大きな荷物を担ぎ,前を歩く人の靴の踵だけを見つめて,ただひたすら歩いていた。せっかく尾瀬を訪れても,どんな花が咲いていたのかあまり記憶にない。
 ところが,この時の山歩きは,実にのんびりと,時間をたっぷりかけ,まさに「ぶらり,ぶらり」の山歩きだった。歩きながら,周囲を見渡したり,写真を撮ったり,それまでの山歩きのイメージを一新させたハイキングだった。
 「
ハクサンチドリ」は「白山」で発見されたことから「ハクサン」,花が「千鳥」の姿に似ていることから「チドリ」,合わせて「ハクサンチドリ」という名が付けられたと友人に教えられた。この花はの名は,しっかりと脳裏に焼き付けられ,もう忘れることはなくなった。このようにして私は,高山植物への興味を持ち始め,花の名前を覚えはじめたのである。
 ハクサンチドリは,私に高山植物への興味を抱かせたきっかけになった花だ。