山 靴 に つ い て 


◎ 初めての山靴
 私が初めて登山靴と言うものに出会ったのは学生の時だった。当時 3000円のお金を持って「キャラバンシューズ」 でも買おうと思い,宇都宮市内の「オーハシ」 という山靴専門店へ行った。
 3000円で買えるキャラバンシューズは有ったのだが,そこの主人の薦めで中古の革靴 を買うことになった。靴の程度は良く,しかも,靴底をビブラムの新品に張り替えて3000円 にしてくれると言う。その当時,ビブラムがどういうものなのかも知らず, 「イタリア製でヨーロッパアルプスで鍛えられた靴底」 ということぐらいしか分からなかった。良いものなのだろうなという漠然とした期待感程度しかなかった。

 その写真を探したのだが,少しだけ写っている写真を見つけた。 今はもう姿を見かけることはなくなったが,足首の革が折り返しになっているものだ。その靴はなかなかの くせ者 で,容易に私の足にはなじんではくれなかった。その靴でいろいろな山を歩いたが,山歩きは足にできる マメとの戦い でもあった。でも,その靴には絶対の信頼が持てた。大学を卒業して就職し,山に行く機会は減ったが,5年ほど履いていて, 寄る年波には勝てず,現役を引退してもらった。

 次に買ったのが,「ミズノ」 軽登山靴だった。価格は1万円で革靴 だった。とても気に入ったのだが,底がビブラムではない 。そこで,スポーツ店で買ったその軽登山靴をその場で「オーハシ」に持っていき, 底をビブラムに張り替えて もらった。張り替え賃が1万円だった。この靴は,それまで履いていた登山靴に比べると,とてもソフトで,直ぐに 足になじんでくれた。マメとの戦いにも終止符を打った。
 この靴は,20年以上 も私と行動を共にしてくれた。といっても,そのころは年に1〜2回程度しか山歩きはできなかった。その代わり,手入れは良く行った。 山歩きをした後は,必ず 水洗いし,陰干しした後, 保革油をタップ塗って室内で 保管した。おかげで,20年以上立っても革は弾力性を失わず,十分な機能を果たしてくれた。 しかし,この靴もさすがに痛みが出てきて,水漏れがひどくなった。しかたなく,1999年の5月, Danner に履き替えた。

 現在,山靴はその性能と用途によって,いくつかのジャンル分けがされている。 山靴風の運動靴や,ヒマラヤ用の高機能登山靴は除外し,一般用に限定しても,布製の ソフトトレッキングシューズ,革製の ハードトレッキングシューズ,高山用の マウンテンシューズ などに分けられる。一昔前と異なり,これからは,目的に合わせていくつかの靴を使い分ける時代なのだ。

◎ Danner (1999年5月購入)
 
 「ミズノ」のあとしばらく, ダナー(Danner) というメーカーの靴を履いた。 布製のソフトトレッキングシューズ で,私の足にはたいへん良く合い,気に入って履いた。その頃は雪のある山には行かなかったので,これで十分だった。

 もともと,私の足は「幅広甲高」で日本人の典型みたいな足だ。普段に履く靴でも,「4E」でないとうまく合わない。 最近は4Eの靴もたくさん出てきたが,以前は,足に合う靴を探すのがひと苦労だった。特に苦労したのが, サッカーのスパイクシューズだった。
 かつて息子のサッカースポーツ少年団の手伝いを頼まれて,審判などをするために,スパイクシューズを探した。当時の店には, アディダスヤスダ のスパイクしかなく,足に合わない靴を我慢して履かなければならなかった。 つま先に遊びがありすぎるスパイクシューズは,なんとも履きづらかった。その後つきあいで始めた ゴルフ では更に,やたらスタイルのいいスパイクシューズばかりで,私の足に合うものは店頭には無かった。 足にあったものを誂えれば良いのだろうが,そこまで金を掛ける気にもなれず,なんとか我慢して履いていた。

 すっかり「ダナー」に惚れ込んで, 妻にもダナーの靴を 買って履かせた。それまで妻は,聞いたこともないメーカーのハイキングシューズを履いていたが,ダナーに替えたら, 「坂道で滑らなくなった」といって喜んでいた。履いてみて明らかな違いが有るというのだ。

 最近,ウレタン底の軽登山靴において,突然 靴底が剥がれる と言う事故が起こっており,各メーカーが共同でPRのチラシを作った。それによると, 軽登山靴の寿命は5年程度ということ。まだ,もう少しは履けると思うが, 次に布製の靴を買うのならばダナーにしたいと思っている。

 このころから,戦場ヶ原を中心としたスノーハイクを始めた。スノーシューも購入し,雪道を楽しんでいるのだが, やはり,ソフトトレッキングシューズには限界があった。防水には問題はないのだが,足が冷えて痛くなる。 やはり雪道でも使えるハードトレッキングシューズが欲しくなった。

  2003年 引退

◎ AKU Eiger (2003年4月購入)
  
 1999年5月に購入して4年間履いていた Danner のソフトトレッキングシューズも随分くたびれてきた。
 そこで,2003年夏に劔岳 に登るのを契機に,新しい靴を買うことにした。ソフトシューズは,足によくなじみ,履きやすいのだが,頼りなさがある。 劔岳の岩を歩くことを考えて, 「ハードトレッキングシューズ」を買うことにした。

 宇都宮市にも店舗があるICIイシイスポーツ のHPで情報を仕入れた。その他,いくつかのスポーツ用品店のHPも見た。「sirio」 もHPを持っているので参考にした。
 自分の足が横広なのを考え,sirio の3Eタイプか4Eタイプ が良いかなと考えていた。
aku の靴についてはイシイスポーツのHPでかなり詳しく載っていた。イシイスポーツでは,山靴をいくつかに分類して紹介している。 その分類で,ハードトレッキングシューズの 「アク ジャスパー」,ライトマウンテンシューズの 「アク バンフ」,あたりが良いかなと考えた。「バンフ」では, ワンタッチ式のアイゼンが装着できる。

 まず,イシイスポーツ宇都宮店 へ行き,店員に相談した。その店員の話によると,「sirio」 の幅広タイプは扱っていないと言う。その理由は,幅の広すぎる靴を履くと,足のホールドが十分にできないため, 靴の中で足が動いてしまうのだそうだ。そのことが原因で,足首の捻挫など重大な事故が起こっているという。 幅が広すぎなければいいのだと思ったが,店に置いてないのでは,履いてみることはできない。 その後,店員の薦める靴をいくつか履いてみたが,なかなかこれだと言うものがない。

 比較的良いと思ったのが,「AKU Eiger」(アイガー) というモデルだ。このモデルは,「マウンテンシュ−ズ」 に分類されるもので,トレッキングシューズよりグレードの高いものだ。もちろん防水性能は高く, ワンタッチ式のアイゼン が装着できる。派手なデザインが多い中で,落ち着いたデザインも気に入ったので,購入することにした。

 この靴を最初に履いて登ったのは,4月27日の石裂山 だ。まず,第一の感想は,足首の固定が強く,足首があまり動かな いことだ。斜面の登りでは,最も上のホックに靴ヒモを掛けないことで何とかなったが,下りでは靴底を斜面に付けるとひざが曲がってしまい, なんとも苦しかった。もう一つ,致命的な問題があった。それは,最初から懸念されていたことだが, 靴の横幅がきつい と言うことだ。特に,つま先の形が尖っており,下りでは足が前にずれると力が全て小指周辺に掛かってしまう。
・ 横幅の拡張
  保管しているとき,靴の内部に木片 を挟み,小指のあたりの横幅を広げるようにした。これは,かなり効果がある。
・ つま先に詰め物をし,足の形に合わせた。
 素材は,やや固めのスポンジ (私はパソコンのマウスパッドを使った)を,つま先に合わせて切り,中敷きに固定した。 こうすれば,中敷きを取り出せば,詰め物も取り出すことができる。これは予想以上に効果があった。 下りの時,体重が小指にだけかかるようなことはなくなり,つま先全体にかかるようになった。
 足首が固定され,保護されているということは,安定感 とともに,足首の疲労の軽減に繋がる。
 劔−立山の山行では,足元のトラブルは全くなかった。
 その後も,2005年春までこの靴をメインに履いた。夏山は勿論,少しずつ始まった雪山へもこの靴で行った。

 2012年6月,9年の活躍にピリオドを打ち,引退した。

◎ Danner (1999年7月購入)(チコ用)

 このdanner は,自分が先に買って履き,調子がいいので妻にも勧めたものだ。 布製のトレッキングシューズにしては作りがしっかりしており,もちろん靴底は ビブラムだ。
 この靴を履く前には,妻は,3流メーカーのトレッキングシューズを履いていたのだが,この靴を履いて,明らかに違うと所がある言った。 それは,靴底が 滑らない と言うことだった。確かに,傾いた岩のフェースを登る場合など,靴底が滑らないと信じられることは大きな安心になる。
 私とほぼ同じ時期に購入したのだが,体重の差などもあり,靴底の減り加減は,私のものほどではない。しかし,そろそろ 耐用年数にも近づき,引退を 考えなければならない。

◎ sirio (1999年購入?型番不明)(チコ用)
 

 この靴は,義妹の形見 としてもらったものだ。義妹は私達夫婦と一緒に山歩きをしていたのだが,癌に侵され,急逝した。
 義妹は,一冬しかこの靴を履かずに逝ってしまった。
 妻にはやや大きいので,中敷きを厚めにして足に合わせている。
 冬専用として,スノーシューイングなどに使っている。ワンタッチ式のアイゼンが装着できる ので,これに合わせてアイゼンを購入した。

◎ aku jasper GTX (2005年3月購入)(チコ用)

  1999年 から履いていた Danner の耐用年数が近づいてきたので,トレッキング用の靴を購入した。
 aku jasper は,ハードトレッキングシューズに属するモデルだが,履き心地はソフトで,布製の Dunner から履き替えても 違和感は少ないという。2005年夏の鹿島槍ヶ岳 からこの靴を履いている。

2012年6月,購入から7年が過ぎ,ソールの剥がれ事故が怖いので,ソールを張り替えた

◎ LOWA TAHOE GTX (2005年7月購入)
 2003年4月に購入した AKU Eiger が気に入り,ほとんどそればかり履いていた。そのため,靴底の減りが目立ち始め, ソールの張り替えを考えなければならなくなった。
 そこで,夏山専用のブーツを購入することにした。
 ネットなどでいろいろ調べた結果,sirio の3E+か4E+ を試し履きして見たくなり,ここならば在庫があるだろうと思い,宇都宮市の「オーハシ」 に行った。「オーハシ」は,数十年前に,私の山歩きの原点となった「山靴」との出会いの店でもある。
 しかし,ここでも在庫はないというので,別のものを薦めてもらった。店長の星野さん に相談にのってもらい,いろいろな話を聞き,納得して買ったのがこれだ。
LOWA TAHOE GTXというバックパッキング用の, スリーシーズン対応の靴だ。
 まず,足入れの感触が良かった。指の付け根付近が絞ってあるので,足指の圧迫感がない aku eiger では,どうしても足指,特に小指の先があたる。長時間歩くと痛みが出る。仕方のないことだと諦めていたのだが,この靴では, 小指の先に余裕がある。この靴は,私の足に合っていると思った。
 この靴は,奥白根山で試し履きし, 鹿島槍ヶ岳 に履いていった。全体的な印象では,(どうしても aku eiger とのとの比較になってしまうが)靴全体が ソフトで,よく足になじんでくれる。反面,若干の 頼りなさも感じるがこれは仕方のないことかも知れない。
 ひとつ,大きな問題が起きた。それは,足にマメ ができるということだ。左右の足の小指の腹にマメができた。鹿島槍 では2日目にでき,3日目にはずいぶん大きくなった。山行を続けていたらたぶん潰れていたと思う。8月末の 八ヶ岳 でも,同じ場所に同じようにマメができた。前回のマメを潰した後に,新しい皮膚が完全できていなかったことが原因かも知れなかった。 そこで,中敷きの,小指の部分を切り抜き,少し余裕ができるようにしたら,まめはできなくなった。

2012年6月 aku jasper と同じく,購入から7年になるので,ソールを張り替えた。

◎ ZAMBELON PERMO GT ZA-980 (2012年6月購入)

 今まで,2003年4月に購入した AKU Eiger をメインにして履いていた。 この靴は,本当によく働いてくれた。一緒に登った山はたくさんあり,思い出せばきりがない。
 2006年5月にソールを張り替えてから,早くも6年経った。ソールの寿命を考えると, そろそろ再張り替えを考えなければならないが,アッパーの痛みも出てきたので,思い切って買い換えることにした。
 ネットで色々さがしてみたが,靴だけは履いてみないと分からない。ネットで調べたものを参考に,ICI宇都宮店に出かけた。

 最初に試し履きしたものがこれZAMBELON PERMO GT ZA-980  イタリア製だが,日本人の足型で作ったと言われるだけに,足入れ感が良い。今まで履いていたものより 1段階大きなサイズのもの を履いたのだが,土踏まずから甲にかけてのフィット感がとても良い。爪先にも余裕があり,これならば足の爪を痛めなくて済むだろう。 セミワンタッチアイゼンも付けられ,トップの皮厚も 2.4〜2.6mm と,冬季でも十分な厚さだ。年齢を考えると,もうこれから,新しい登山靴を買うこともないだろうから,大切に使おう。(2012.6.11)

◎ TECNICA ACONCAGUA-GTX (2016年5月購入)
 
 今履いている夏用のLOWA の TAHOE GTX は,2005年に買ったもので,2012年にソールの張り替えを行っている。しかし,その後4年が経ち, そろそろソールの再張り替えの時期なのだが,アッパーの痛みも目立ち始めたので,思い切って買い換えることにした。
LOWA の TAHOE GTX は,オールレザーのかなりしっかりした靴だが,その分かなり重い。 今回もオールレザーを考えたのだが,近年は素材の研究も進み,レザーにこだわらなくても良いのではと思うようになった。
 今回選んだのは,テクニカというメーカーの,トレッキングブーツだ。テクニカという会社は知らなかったが, イタリアの会社で,主にスキーブーツを作っている会社とのこと。アッパーは,スエードとファブリックで,オールレザーではないが, その分,かなり軽い。写真は,レースを取り替えてある。 私は何時も,シューレースは,3mmの細引きと交換して使っている。山小屋で間違うこともないし,何より,確実な感覚が気に入っている。 5月13日の奥白根山で初めて履いたが,足には優しい作りで,足との相性は良い方だと思った。(2016.5.16)