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戦 場 ヶ 原 NPV特定種開花調査

2012年(平成24年) 6月3日(日)

 戦場ヶ原・小田代原 は,標高 1400mに位置する湿原で,特有の植物が生育しており,全国的に見ても貴重な地 域だ。ところが,近年になって 野生のシカ が増えだし,その食害によって植物がダメージを受けるようになってきた。そこで,シカ が湿原に入れないようにするため,栃木県は,1998年に 小田代原の周囲を電気ネットの柵で囲んだ。 その結果,急速に植物の生育に改善が見られた。そのことを受け,2001年12月に, 環境省が1億4,400万円をかけて 戦場ヶ原全体をカバーするネット を設置した。戦場ヶ原は,その中央を 国道120号線が横断しており,完全に封鎖すること はできなかった。そのため,柵の中に侵入するシカが徐々に増え続けた。その結果,当初はかなりの 改善が見られたが,次第に再びシカの影響を受けるようになってしまった。そこで,柵内に侵入した シカが増え過ぎないようにするため,積雪期にシカの駆除を行い,現在では植生の回復が見られるよ うになった。
 日光パークボランティア では,湿原の植物がどの程度シカの影響を受けているかを調べるため,いろいろな調査活 動を行っている。 「特定種開花調査」 とは,シカが好んで食べる植物のいくつかの種類 「特定種」 について,その開花状況を数年間に渡って調査することで,シカの摂食による影響を調べ ようとするものだ。今回調べるのはこの 「クロミノウグイスカグラ」 だ。
 「朝日百科 世界の植物」 (朝日新聞社)では, クロミノウグイスカグラ についてこのように述べている。
 「クロミノウグイスカグラ L.caerulea L.ver. edulis Turcz.ex Herder はアジア東北部の寒い地方 に広く分布する。日本では本州中部以北と北海道に野生し,特に 日光の戦場ヶ原 に多い。<倉田悟>」
 ところが,このように書かれた 「日光戦場ヶ原」 クロミノウグイスカグラ がシカの食害の影響などであまり見られなくなってしまっていた。 

 ボランティアハウスの前に咲いていた タチツボスミレ

 ナナカマド の花序。白い花が咲き,赤い実となり,黒く熟す。



 ズミ はまだ蕾だった。花が開くと白くなる花だが,蕾のうちはきれいな赤色だ。


 ミヤマウグイスカグラ の赤い花も,良く見ると可愛い。

 ワタスゲ の穂も白くなった。


 一面が真っ白になるには,まだ少し時間が必要だ。


 クロミノウグイスカグラ は優しい黄色の花を,うつむき加減に開く。


 戦場ヶ原では,鹿よけネットのおかげで,着実に増えてきている。


 戦場ヶ原では珍しい ヒメシャクナゲ も咲いていた。


 背景の山にもガスが掛かり,天気は下り坂。風が出てきて寒くなった。この木は, シラカンバ 。葉の形と葉脈の数で見分けられる。


 メギ もこれから花が開く


 何種類かの野鳥にも会えた。これは アオジ


 キビタキ は鮮やかな色彩で,分かりやすい。


 これはコガラ


 戦場ヶ原 クロミノウグイスカグラ は確実にその数を増やしている。私が調査に初めて参加した5年前は,クロミノウグイス カグラの数が少なく,探すのに苦労したのだが,今は数が多く,数えるのに苦労する状態だ。生物の 多様性の確保という観点からは,極めて好ましい状態だと言える。

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